ここ数日来私の頭の中で、ある少年たちのお話、というよりもあるイメージの断片が浮かんでは消えて、何かするとまた浮かんでは消えて、ということが繰り返されている。
さて、どの辺りからこのお話が始まるのが良いのか、どのような展開を作れば良いのか、画像的なイメージが浮かぶばかりなので、お話として繋がっていくのかどうか、甚だ心許ない。
さて、どの辺りからこのお話が始まるのが良いのか、どのような展開を作れば良いのか、画像的なイメージが浮かぶばかりなので、お話として繋がっていくのかどうか、甚だ心許ない。
大した冒険が彼らを待ち受けている訳でもない。むしろ彼らの冒険は、彼らが離れ離れになって、夫々の道を歩み始めてから、夫々が別の場所でその苦難を味わうことになるのであるが、私の中にあるそのイメージ・お話の断片は、一地方都市で育った彼らの極々平和で幸せな時代に限られている。それ故に、彼らのお話には、私たちにも共有可能な、ある種の郷愁を有しているはずである。
私のイメージは、例えばこんなふうである。
冷たく乾いた風が吹き荒れて、赤茶けた風塵が舞っていた季節が何時しか過ぎ去って、太陽の日差しは明るくなり、その街に吹き渡る風はまだ幾分冷たいものの穏やかなものになっている。街の中心部を流れる川の水は幾分濁っているもの静かに流れていて、舗装された川岸沿いに植えられたしだれ柳は新芽があるもののまだ固く、その川岸の所々に設けられた緑道公園の桜の花は満開で、時折吹く春風に揺れていた。
その朝、その川岸の道を通勤や通学で行き交う人達に交じって、紺色の学生服に紺色の半ズボン、白タイツを履いた小学生二人が歩いて往く。その春、小学3年になった少年はまっすぐに前を向いて先を歩いているのだが、その後から続く小学1年生の少年は歓びを全身で表現するかのように、辺りをキョロキョロと見渡しながら、そして時折気になる方に駆けださんばかりに元気いっぱいに歩いている。この二人、兄をサトシといい、弟をツトムと呼ぶことにしようと思う。
時々サトシは振り返りながら、弟をたしなめる。「ツトムちゃん、ダメだよ。川をのぞき込んじゃあ危ないよ。母さんに言われただろ。ちゃんと、まっすぐに歩くんだよ。川に落ちると死んじゃうよ。」。それでもツトムは最初のうちは大人しくサトシのいう事を聴いているのだが、やがては辺りの景色が物珍しくあちらこちらが気になる風で、なかなか前に進まなかった。サトシは、業を煮やして「もう知らないよ。兄ちゃん先いくぞ」と捨て置くように足早に歩き始めると、「待って・・・」とツトムが半泣きになりながら必死でサトシの後を追って登校していった。
その日サトシにとっては、3年生になって初めての登校日であった。弟は前々日に入学式を済ませ、その日が初登校日であった。彼らが通う学校区は、公務員や転勤族が住む地区にあり、その街の所謂文教地区であった。彼らの父親は大学教員であり、一家はこの地区の一画にある官舎に住んでいた。この日はサトシにとっては初めて経験するクラス替えが発表される日でもあり、少しでも早く登校したかったのであるが、朝食時に母親から初登校のツトムと一緒に登校し、彼のクラスまで送るように言いつけられた。
その時、サトシは思わず「うん、ちょっと・・・・・」と軽い抵抗を示したのであるが、横で聴いていたツトムが「お兄ちゃんと行くんだ・・・」と泣きはじめ「じゃないと学校にいけない」などと言い張るものだから、仕方なく逸る気持ちを抑えながら、ツトムを連れて登校したのであった。
母親の言いつけ通り、ツトムを彼のクラスまで送り、彼が嬉しそうに自分の席に座ったのを確認した後、サトシは足早に3年生専用の下足箱のところへ向かい、下足箱から校舎に入る出入り口に掲載されたクラス編成表を確かめた。
さて、ここまでは書いてはみたものの、どのようなお話になっていくのか、私には今のところ今後の展開に何の展望もない(笑)。
おぼろげながら浮かんでいるイメージの断片を繋いでいく不連続シリーズになりそうなのである(笑)。
0 件のコメント:
コメントを投稿