2014年12月8日月曜日

乗りバカ日誌 ~近江浪士、江戸市中に潜伏する件~編


※この場合のイチロウを例えば役所広司、マサキを例えば橋爪功が演じていると想像しながら、以下お読みください。

 
 

“全く、困ったことになったぞ。どうしたものか……..。イチロウ殿のご下命をどのように処理することが良いのかのう? どのように書けばイチロウ殿の意図を、あのお方に無理なくお伝えできるのか。そして、あのお方の真意を確かめることが出来ることになるのか?”

 

その日から数日の間、私、祐筆・マサキは同じ問答を自分の中で繰り返し反芻していたのでございました。

 

あの日・師走に入り3日目、私は用向きがあり中山様の屋敷に出向き、書記処に引き上げてきたのは5時過ぎ。早速イチロウ殿より呼び出しが掛かり、イチロウ殿の詰所へ赴き、中山屋敷での首尾について報告申し上げました。

 

イチロウ殿、「それはご苦労であった」と短くお返事なされ、お役目時間が終わったことを確認されたあと、書見台の脇に置かれていた、自転車フレームをやおら取り出し、表情を変えずヤスリで静かにそのフレームの塗装を剥がしに取り掛かったのでございました。

 

このマサキ、“さすがはイチロウ殿、平時にも武士の魂を片時も忘れておられず、武具のお手入れに余念がないの”と見惚れておりました。

 

すると、イチロウ殿、ふと手を休められて視線を私に向けられて問いを下されたのでございます。

 

イチロウ殿「のうマサキよ、最近のコウスケをどう思うかの?」

マサキ「どう思うとおっしゃいますと?」

イチロウ殿「どうもわしが見るに、歌舞音曲に感け酒食に耽ているようだの…..。このコウスケの有様をどう見る、マサキよ」

 

“あちゃ、やはりイチロウ殿もご覧になっておられたか……。コウスケ殿は元来音楽好きのお方で、○○は最高のボサノーヴァだ!とか、○○御大のプレイは至高間違いなし!とかご機嫌なツイートをよくしておられる。お酒も大の好物のご様子で、最近は専ら江戸城下の各所で流行っているという噂のハイヴォールを特に好んでおられる様子、ツイートしておられた。師走に入り、その呟き回数が増え、年忘れ宴会も積極的に参加されておられるようだ。”

 “歌舞音曲、酒までは分かるが、「色」までは流石にこのマサキ、コウスケ殿の様子を存じ上げなかったが、日頃あのお方の取り上げる、モニカ・ゼッターランド、若尾文子、江利チエミなど……、色好みも独特の感性を持ってられるみたいだの。”

 

イチロウ「おい、マサキ。何を先ほどからボソボソと独り言を言っておる。良いからワシの問いに答えてみよ」

 

マサキ「はは、ああ見えてコウスケ殿は近江の出て佐々木源氏の流れを汲むお方にて、武士の嗜みとしての歌舞音曲に興じておられるのでございましょう。」

 

イチロウ「それにしてもだ、あの傾斜ぶり尋常ではなかろう。どうも最近の奴の行動を見るにつけ、男子の本懐を忘れてしまったのではないかの。」

 

マサキ「本懐と申しますと………..?」

 

イチロウ「貴様まで…..、岩城島・広島での誓いを貴様らよもや忘れたのではあるまいの!?」

 

“あっ!”そうでありました。岩城島での誓い。確かにサイクリング大会を経験し、自転車の面白さを堪能しつくしたところで、次回は琵琶イチ、長浜城下に再びGilberto’s一同で討ち入りを果たそうと、一同で誓い合ったのでございました。それは、多分コウスケ殿も片時も忘れてはおられますまい。今は、世を忍ぶ仮の姿として江戸町人に身をやつしておられども、コウスケ殿はれっきとした近江武士でございます。”

 


マサキ「イチロウ殿、敵を欺くにはまず味方から、と申すではございませぬか。歌舞音曲に盛り上がっておられるのも、ハイヴォールで酔い気分に浸ってらっしゃるのも、全てこれ、敵を欺く攪乱でございまする。忠臣蔵の大石内蔵助のように、表向き派手な遊興を繰り返し、敵方の動静を探り且つ時が熟するのを待っておいでなのでしょう。ああ見えて、隠れたところで江戸の激坂を鍛錬されておられましょう。」

 

イチロウ「そうかの。では、一言“岩城島の誓いを忘れるなよ”と書き送っておけ。以上。下がってよし」

 

これは大変なことになりました。コウスケ殿も、コウスケ殿なりに動いていらっしゃるに違いありません。誓いを忘れたなどと書き送るには、余りにも不躾すぎやしないでしょうか。

 

“はて…….。”こうして私マサキの懊悩の日々が始まったのでございました。

 


“そうだ、この手でいこう(笑)..........!”

 

つづく。

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