2017年7月19日水曜日

真夏の思案


イチロウと今年820日に開催される「やまなみ街道クラムライド 2017」(島根県)に参加することになった。夏から秋にかけて開催されるいくつかのサイクリングイベントの中で、この大会が私にとってスケジュール的に都合が良かったからというのがその参加理由だったのだが、後で考えてみるに、今回の開催場所が、昨年参加した「石見グランドフォンド2015/ 140㎞」のコースに近いこともあり、知らず知らずのうちに前回の雪辱戦という気分にもなってきた。




「石見グランドフォンド」は、アップダウンが激しく、我が両脚には誠に厳しいコースであった。事前の準備はほとんどせず、物見遊山;走りはじめたら何とかなるだろうという気分で参加したのであったが、当日は強い陽射しに30℃越えの気温となり激坂を含む上り下りを140㎞走行、途中幾度か両太ももに痙攣を来しながら、そして途中迷子になって、制限時間ぎりぎりでフィニッシュしたのだった。あの時の我がヘタレ具合を思い出すたびに苦い想いに駆られ、「次回こそは」とその時の雪辱を晴らしたいという想いを募らせていた。



今年は他のスケジュールとの兼ね合いで参加を見合わせだったのだが、来年5月には同大会に参加してリベンジを果たそうと思っていた処、「やまなみ街道クラムライド」開催の知らせが手元に届いたのであった。雪辱戦とするには、「もう少し我が両脚を鍛え上げてから…」と時期尚早のような気がしなくもないのだが、自分の中で来年まで自転車に対するモチベーションを今のレベルで保っていける保証もないのだから、この度のチャンスを利用した方が良いだろうと思えた。



「やまなみ街道クライムライド」への参加を決めたのが625日、その前後から週2回夕方20/1時間程度、月2回週末山坂道をルートに入れた4050㎞程度の走行練習を重ねてきているのだが、どうも今ひとつ自信が持てないでいる。

https://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=746630723c12db17cb2b7441299753d4

「やまなみ街道」のコースは、距離140㎞、その間2度ほど標高500ml(距離にして10㎞と20㎞)獲得標高4000ml強の上りをこなさないといけないらしい。前半の登り坂は、私が練習したコースの中では極楽寺山登坂とほぼ同じようなプロフィールなので想像つくのであるが、後半の20㎞の上りついては今のところ経験がない。しかもおよそ100㎞を走って疲労がそれなりに蓄積した上で、20㎞×500mlの最後の登坂をどうするべ?と思案している。そしてコース全体のプロフィールに加えて、8月の気温も気にかかるところで、昼間は山間部でも摂氏3234°は行くのだろう。



果たして最後まで体力・両脚が持つかどうか? 自分が言いだしっぺなのでヘタレキャラになる訳にもいかず、参加申し込みをした後からあれこれと疑問/ 不安が頭を過ぎるのであった。

そのような状況を抱えつつ先日717日(日)に夜勤明けの昼間に練習走行をした。

当日の天気は曇り/ 時々晴れ。昼間の最高気温予想は32℃となっていた。山道を含めて60㎞程度を予定していた。



出発時間は午前10時頃。自転車乗りにすれば、完全な出遅れ状態であったのだが、この度の練習の目的は、真夏の暑さに馴れることも考慮に入れていたので、それで良かった。



どんよりとした曇り空で北側にグレーの雨雲がゆっくりと流れていたのであるが、それに反してとても蒸し暑かった。走りはじめてなだらかな坂を二つ乗り越えたところで、曇り空から時折顔をのぞかせる強い陽射しに浴びて早くも大量の汗がしたたり落ちる。思いの外、両脚が重い。暑さに早くもやられた感じで、30分程度走ったところのコンビニで水分補給を行った。“これは山坂道にチャレンジするは無理。熱中症になりかねない”と身の危険を感じる。

その日のルートは、江田島の「国立青年の家」付近を出発して南下し、倉橋島本浦地区の桂浜を折り返しポイントとし、復路に400ml程度の山道を登坂してスタートポイントまで帰る60㎞を想定していたのであるが、走りはじめて暑さに根を上げてしまっていた。



「こんなことで大丈夫か?オレ。ヘタレになるのか」と自問するが、“熱中症になって更に自信を失うよりは、とにかく暑さに馴れることに徹しろ!”とやや都合の良い声が頭の中に浮かんできて、山道を断念する代わりに折り返しポイントを本浦地区の先の鹿島とし走行距離を60㎞から80㎞に仕切りなおすことにした。



その後は、湿気を帯びた熱風の向かい風を浴びながら、ひたすらにペースキープを心がけながら走行。早瀬大橋に上がるループ登り坂、倉橋の本浦地区に入る前の登り坂、本浦地区以後の入江と入江を繋ぐなだらかな坂道の連続をそれなりにクリアしていった。何度も走行したルートなので先が読めるというのもあったのだけれど、今までに比べたら身体に感じる負担感は少なかったように思えた。ただその間、南から吹く風と時折照り付ける陽射しに大量の汗をかいてしまい、その後もう一度休憩を入れて水分補給をする必要があった。その間ミネラルウォーター500ml 1本、スポーツドリンク500ml、コーラ250mlを摂取していた。倉橋鹿島の突端の集落に到着したのが、午後12:00過ぎで走行距離は45㎞となっていた。20分程度、その集落のある建物の軒下で休憩し、コーラ250ml+スポーツ飲料500mlを摂取。早くも2000mlの水分補給を行ったことになるのだが、恐ろしいことに尿意全くなしw



午後12:30前に鹿島の集落を出発。復路はゆっくりと引き上げることにし計測しなかったのであるが、入江と入江を繋ぐ坂道を走っていたら次第にペースが上がり(ゆっくりと登るよりもある程度のピッチを保ちつつ登坂した方が負荷が少ないことに気づく)、それなりのスピードを保ちながら本浦地区を通過。本来であれば、この地区に或る食堂「かず」で昼飯を取りたいところであったが、この度は連れが居ないものだからパス。そのまま走行を続け本浦地区からのやや勾配のきつい坂の脇を通る農道を使って登坂~この道も結構きついのだけれど~、一山越えた宇和木地区に下りたところにあるスーパーに入り、昼食としてバナナを挟んだクレープサンド、チオビタ1本w、ポカリ500mlを購入し、日陰のベンチで食す。未だ尿意なしw



バナナと生クリームを挟んだクレープを買ったのだが、その甘さを堪えて食べながら、「やまなみ街道クライムライド」へのエントリーを後悔し始めていた。



「どうも、真夏の昼間を走行するには、十分な水分確保とアミノ酸・ミネラル・ビタミン補給を考えなければいけないし、栄養補給も積極的にしていかんとなるまいて。」



「それにしても30℃越えの昼間に140㎞、しかも獲得標高4000mlのコースプロフィールを設定する奴って無理があるんちゃうの?」

「普通の50歳のオッサンは、炎天下の中、140㎞、しかも山坂道を無理してチャリで走らんわな。」

「ひょっとしてこの度の大会参加者って、変わった野郎ばっかりなんやろか? あ、こんなにムキになって真剣に悩んでいるオレもそこそこ変わり者かw?」



「変わり者」という語が浮かんできて、妙に気分が軽くなってきた。そうそう、真夏の炎天下に山坂道140㎞を自転車走行しようとする50過ぎのオッサンて同世代のmajorityから見れば変わっているに違いないし、それに挑もうと真剣に悩んでいるのも変わっている。仕事や家庭や己の人生上の悩みとは全く違う、その気になればパス出来るし、したところで人生に大きく不利益が生じるわけでもない、言ってしまえば遊びごとの悩み。そんな事に真剣に悩んでしまっている。こんなことに悩んでいられるなんて、とてもhappyな事じゃないですかw? 



栄養補給(になったかどうかはわからないが)を終えて、再び走行を開始したのが、午後130分ころ。そこそこ疲労を感じ始めた早瀬大橋の手前で、再び計測を開始。疲れたところで、一定のピッチで最後まで走行できるかどうかを確認することが目標であった。



曇はちぎれて真夏の午後の強い日光が辺りに射していた。「やるしかあるまい」と気を取り直し、ペダルをひたすら回す作業に没頭し始めたのであった。

(おわり)