2015年2月20日金曜日

そうこうしている間に………(2)

イチロウの鋭い直面化に思わず我が本分を忘れかけていたマサキであったが、約1週間のブランクを経て、予備学習に戻った。この辺り我ながら節操がないというか軽佻な感じがしないでもないがw、兎も角も、試験まで・もといコンサート・Gilberto’sの面々との邂逅まで残り1週間となり、自己の内面について深く省察している場合ではなかった。

 
前夜帰宅途中にファミリーマートに立ち寄り、i-tune card3000円分購入し、本日仕事が終わるのを待って、i-tune storeJohnny AlfElianeEliasの音源を探ししばしどれを購入するかを検討。大いに迷った挙句、以下の3枚をDL購入した。

1 Johnny Alf/ Johnny Alf (1965)

 
2  Eliane Elias plays Jobim/ Eliane Elias (1990)

 
3 Steps Ahead/ Steps Ahead(1983)

 


#1ジョニーアルフは、ブラジルのボサノバ期前夜を飾るシンガーソングライターであり、有名ホテルのラウンジやバーを中心に、ピアノ弾き語りで数々の佳曲を演奏していたアーティスト。後のボサノバ期の中心となるアーティストに少なからぬ影響を与えたという。穏やかで滋味に満ちた歌声は聴いていて気持ち良い。個人的にはブラジルのナットキングコールみたいな捉え方をしているけれど、そうでもないかw?ボクが、熱心にブラジル音楽を集めていた90年代には、あまりCDが手に入らず、これまで2枚程度しか持っていなかった。このたび、DLしたアルバムは65年制作となっているが、彼のキャリアから見れば既に後期に入るのか? 1曲目のKao XangoMikaさんもアルバムで取り上げていたな、思わず聴き入ってしまった。このヒトの演奏は本当に平和的で夏の黄昏を眺めながらぼんやりと聴いていたい:やっぱりラウンジで鍛えた音楽だもの。

 


#2 イリアーヌ・イリアスは、実は1980年半ばにメージャーデビューしたブラジル出身の女流ジャズピアニストであることは当時から雑誌などで知っていた。あの当時、ブラジル出身なのに何故ボサノバを演奏しないのか不思議に思っていたのが、その後フォローしていなくて、この度再度ネットで検索してみると、ボサノバを演奏するピアニスト・ヴォーカリストと表記されているのには驚いた。それはそうなるのが自然な流れか、思えたりした。Wikipediaを斜め読みしてみると、1960年、サンパウロ生まれ、幼少からビル・エバンス、キース・ジャレットなどをコピーしジャズ好きであったらしい。プロデビュー後、パリへのツワー中にベーシストのエディー・ゴメスに見いだされ渡米した。83年にSteps Aheadに参加、そしてランディー・ブレッカー(tp)と結婚、85年ソロデビュー。その後ランディー・ブレッカーとは離婚。現在の夫は、マーク・ジョンソン(b)とのこと………

 
個人的に申さば、上記したミュージシャンはボクのいずれもアイドルだったw。

 
ビル・エバンス(p)については、ボクが有名すぎるこのお方について何も書く必要もないだろう。彼の「Paris concert」というLPを高校1年の時に買ったのだが、それがボクが生まれて初めて買ったジャズアルバムであり、その後彼の音楽に嵌り現在に至る。因みにGilberto's全員、夫々の経緯を辿って、このビル・エバンスが大好物である。

 
エディー・ゴメスは70年代前半にビル・エバンス・トリオのベーシストを勤め、80年代はよくジャズフェスティバルなどで来日してい、80年代はSteps Aheadのベーシストを勤めたりした。個人的な想い出があり、90年代半ばに親戚の女の子が通う地方の音大の学園祭にも来てくれたことが有り、演奏後に他のヒトとならんでサインを貰ったが、ボクが彼のソロ・ファーストアルバムを差し出すと、そのLPを取り上げて、周囲に居たサポートメンバーに見せながら豪快に笑っていた、結構押し出しの強い御仁だった。ちょっと近寄りがたく怖かったなw。

 
ランディーブレッカー(tp)は、弟のマイケル(t-sax)と共に70年代はブレッカーブラザーズというバンドで、ジャズ・ヒュージョン界で一世風靡したヒト。その後も売れっ子スタジオミュージシャンとして活躍した。個人的には、80年代初頭のジャコ・パストリアス・ビッグバンドでの演奏が良かったな。因みに、弟のマイケルも大好きなミュージシャンで、大変嵌っていたのだけれど、このヒトは後述べるSteps Aheadに参加していた。

 
そして、マーク・ジョンソン(b)。このヒトはボクの記憶が間違っていなければ、ビル・エバンス最後のトリオのベーシストを勤めたヒトの筈。ビル・エバンス・トリオと云えば、誰しもスコット・ラファロを真っ先に挙げるのだろうけれど、個人的には枯れた味わいを醸し自身の音楽を昇華させようと映っていた晩年のビル・エバンスが大好きで、その脇でしっかり支えたこのベーシストであったこのヒトの演奏が大好きである。

 
こうしてみると、このイリアーヌってヒトの人脈展開って、解る気がするなあw、それもボクの好きなミュージシャンを辿っておりまする。世間て狭いものだ:もっともボクには全く個人的な接点など全く有るはずもないのだけれどw。

 
さてこの度DLした#2アルバム、なるべくMikaさんが聴いて影響をうけていたであろうと勝手に推測した90年制作のものを選んでみた。イリアーヌ(p)、エディー・ゴメス(b)、ディック・ディジョネット(ds)のトリオとなっている。タイトル通り、ジョビンの名曲を並べて演奏しているのだけれど、これは全くジャズしてます。楽理的なことは申せませぬが、ニューヨーク的な洗練さが漲っていてあの当時のよく耳にしたJazz的サウンドが鳴っています。でも全くSambaしていないw。(b)(dm)も強力過ぎて軽快さが物足りない、だけども、こんな毛深そうなw強力なリズム隊と対比されるとイリアーヌの音は際立って美しいです。それから、最後のpor causa de voce で聴かせる彼女のボーカルも優しくて良い雰囲気が出ている。しかし…….、エディー・ゴメスのベースって、何を演奏させてもエディー・ゴメスなのであって、存在感は圧倒的なのだけれど、そういう理由で彼が所属した時代のビル・エバンス・トリオの作品群は、個人的にはちょっと敬遠がちになり今では全く聴かなくなってしまったな、というのは話がそれてしまったか。このアルバム、ひょっとしてエディー・ゴメスの影響が強すぎるのか、他のイリアーヌ作品を聴いてみる必要ありそうだ。


 
そして#3のSteps Ahead。高校時代か大学の始め頃、このアルバムLPを購入して繰り返し聴いていた。このグループは、80年代の始め頃からStepsという名前で活動を始めていた。マイケル・ブレッカー(ts)、スティーブ・ガッド(ds)、ドン・グロルニック(p)、マイク・マイニエリ(vib)、エディー・ゴメス(b)で構成されていたのだが、当時いずれもジャズ・ヒュージョン界の大スターだった。ジャズ・ヒュージョンを真面目に聴こうとしていたガキには打って付けのグループだった。当時の雑誌にもよく取り上げられて、「それまでのジャズ・ヒュージョン界の商業主義的な電気音楽に不満を持ち始めたスタジオミュージシャン達が自分たちの本当にやりたい音楽をやり始めたのだ……」などと判で押したような解説をしていたっけ。その後、本作発表と共にSteps Aheadと名前を変更、メンバー一部を交代し、ピアノが当時新人のイリアーヌ、ドラムスがピーター・アースキンとなった。このピーター・アースキンも大好きなミュージシャンなのだけれど、この度は割愛。

 
この作品は、今聞き返してみると、やっぱり時代を感じさせる。ちょっとやや奇抜に思えるメロディーラインであり実験的な要素があるようで、メンバーが新しい何かを模索している感じが全編から感じ取れる。アコースティックサウンドに回帰しつつ何か新しいサウンドを模索していた80年代のニューヨーク・ジャズシーンを反映しているように思われるだけれど、その後果たしてその実験は成功したのかどうか、ボクは知らない。ただ、これらのサウンドの系譜が今のジャズにつながっていることは間違いないのだろうな。あの当時も印象にあまり残らなかったけれど、此度聞き直してみても新人であったイリアーヌの印象はちょっと薄い。確かに2.の“island”や“loxodrome"で長いソロを取っていてよく弾けているのだけれど、「他の大物によくついて行っています」てな感じです。これは仕方がないよね(済みませぬ偉そうに、オイラは何者だw?)。

でも、やっぱりこのアルバムは発表から四半世紀経っているけれど、カッコよく思えるし大好きです。

その後のイリアーヌの音楽的展開をフォローする物理的なゆとりを今は持ち合わせていないので、この度は彼女のボサノバ作品群を辿るのは自重しておこうと思う。

 
この度、Mika Samba Trioの作品を聴いていて個人的に“へーっ”て思ったのが、その演奏がブラジルのSamba Jazzの本質を十分に捉えながらも、80年代~90年に変遷していったニューヨークジャズのサウンド系譜を受け継いでいるような気がしたからであったのだけれど、ほんの少しだけイリアーヌに触れて序でにSteps Aheadに触れてみて良かったな。そのイメージを補強してくれたようで、個人的には有意義な予備学習だった。

 
最後になるが、これは全く個人的な感情移入であり、こんなことを述べることは気恥ずかしいことになるのだけれど、この度のコンサートでは、あの当時に熱心に聴いていたJazzやブラジル音楽をボクが好きだった要素や系譜を踏まえて現代の2010年代の最前線の音楽として再提示してもらえるのではないかしらと思っている。そう思うと本当に軽い興奮を覚え、ついニタニタとしてしまうのだけれど、イチロウの前ではポーカーフェイスで通そう。また鋭い突込みを入れられそうだからね(笑)。

 
ああ、そうだ。彼の突込みには、ボクに対するある本質的側面をポジティブに捉えて直面化したのであることを、ちゃんと付記しておかなくてはならないな。

(おわり)

0 件のコメント:

コメントを投稿