2014年11月2日日曜日

Gilberto’s(+One)、しまなみ海道に遊ぶ、の事~前夜祭編②~


 
今治・しまなみアースランドに設けられた受付会場で、ジロウとヤマグチ青年が受付を済ませるのをぼんやりと辺りを散策しながらしばし待った後、前夜祭の会場となる焼き鳥屋「五味鳥」に向かった。



 この店は今治市市街地にあって、事前にコウスケとジロウが調べて探していた処であった。当初は、彼らが折角関東から出向いてくるので、「何か瀬戸内のものを」とイチロウと二人で検討していたのであるが、田舎者から見ると都会に住む彼らの情報収集力は凄まじく、今治名物といえば「鉄板で作る焼き鳥」で、そしてその老舗として「五味鳥」があることをmessengerでのやり取りの間にあっという間に調べ上げていた。イチロウとふたりで笑いながら、「若い者に素直に従うべ」ということで彼らの提案を尊重したのであった。

 手際よくコウスケが「五味鳥」に連絡を取り予約を入れてくれた。五味鳥に着いて、上がり座敷に通される。入店した時には、20席くらいあるカウンター席が半分埋まったくらいであったが、しばらくすると満席状態となり、この店が地元でも人気店であることが判った。

 


座敷に一同で座ったところで、一息ついた。通路側に私、左回りにコウスケ、ヤマグチ青年、ジロウ、そしてイチロウが座る。アルコールを飲む私とコウスケ、ヤマグチ青年で瓶ビールを注文、イチロウ、ジロウはウーロン茶を頼んでいたか。まずは店お勧めの焼き鳥を数品、そして今治名物の「せんざんき」を注文する。この「せんざんき」、要はから揚げのことで食したのは実は今回2回目であった。前回コース下見の際に寄った大三島のレストランで食べたのだが、その時はあまりピンと来なかった。だけれどもここの「せんざんき」は実に上手かった。しょうゆベースににんにくを効かせた甘いタレが鶏肉に沁み込んでいて、そとの衣はカリカリで中はジューシー、今治に再訪する機会があったらまたこの店の「せんざんき」を食べてみたいと思う。

 5人で何を話したか、実はあまり憶えていない。久しぶりに会ったジロウやコウスケの雑談を聴きながら、彼らとの再会を喜んでいた。

 Oneのヤマグチ青年は、まだ20代半ばのようでイチロウ、ジロウや私から見ると20歳以上も離れた世代で、こんなオッサンの集まりによくもくっついてくるものだなと密かに不思議に思っていた。ジロウの職場の同僚で、よほどジロウの仕込み方が良かったのか(笑)、前回参加してみてこのオッサンの集まりに居心地の良さを感じてしまったのか、彼の心もちをこの度それとなく確かめてみたかった。

 4人のうち誰が言ったのか忘れてしまったが、彼に「ブラジルの音楽は聴かないの?」と尋ねたところ、彼はハニカミの笑いをしながら「それをしてしまったら、ダメになりそう」と言ったではないか!思わず4人のオッサンども大笑いとなった。確かにある意味で、“ダメになったオッサンです、ボクは”と心の中でも笑ってしまった。密かにGilberto’sの入団テストみたいな質問だったのに、やっこさんの方から軽く拒否してしまっていた(笑)。

 前回のreunionの時もそうだったけれど、ヤマグチ青年は至極マイペースな現代青年で、相手がブラジル音楽好きのオッサンだろうが、堅物のオッサンだろうが、そのペースはくずさないのだろう。妙なツッパリや自己主張も、年長者に対する非礼な態度はないし、愛想も悪いわけではない。気を遣って萎縮することも緊張することもなさそうで、ひたすらマイペースで彼自身それなりに楽しんでいる様子である。

 “へー”と思う。それはそれで今風の青年気質をもった好感の持てる良いオトコだと思った。“+One”としてこれからもオッサンたちに付き合ってくれそうである。

 お酒大好きなコウスケと私であったが、翌日のサイクリングを意識して大酒は控えて、ビール34本で済ませる。その店では、腹八分に留めておいた。この後、ジロウとコウスケが事前に調べておいた因島土生町にある「入船」という店で、“ホルモンうどん”なるものにチャレンジすることになっていたからである。

店を出た後、翌日の朝飯、そしてサイクリング中の補給食など購入のために今治市街地を散策しながら地元のスーパーに向かう。

 スーパーにて、ジロウの収集物のひとつに「バナナのシール集め」があることを知り、軽い驚きを覚える(笑)。ブラジル音楽やサンバジャズなどのLPCDなどの音源収集、ミニカー集め、それからデータ集め(自己の自転車走行時のもの、愛車のガソリン消費量など)は薄々とは知っていたけれど、「バナナのシール」も収集対象になるなんて知らなかったな……()

 


イチロウ、コウスケにも言えるのだけれど、彼らの興味対象に対する広さと深さ、情報収集量には時々ハッとさせられて後頭部を軽く打たれたような想いがすることがある。いつも感じるのだ、それに比べて己の凡庸さよ、と……..

 そんな事を思っていると、ヤマグチ青年はコンデンスミルクのチューブを探している。なんでも、途中の栄養補給にそのまま中身を飲むのだとか。これにはGilberto’sのオッサンども大いに笑う。琵琶湖の時もそうだったのらしいのだが、彼はサイクリング大会の時には必ず、コンデンスミルクチューブを携行し、休息の折に愛飲しているらしい。“確かに血糖値は上がりそうだけれど、むせやしないか?脂肪分は却って吸収しにくくないか?”などのオッサンどもに突っ込まれるが、彼は“これが良いのだ”と笑っていた。

 さて私は、コウスケとその晩部屋呑みをするべく、さりげなくウヰスキーの小瓶を購入し密かに3次会に備える。

 今治からホテルまでの帰路は、イチロウが運転してくれた。夜走る来島海峡大橋は綺麗だったな。済まないイチロウと想いつつ事前に彼が申し出てくれた提案に改めて感謝する。

 


午後8時過ぎに一度ホテルに戻り、徒歩でホテル近くにある「入船」なる店に向かう。このお店、かなりローカルな焼肉屋さんで普段は地元のヒトしか入らないのだろう。通りから一区画入った路地裏にあった。ここもコウスケ、ジロウが事前に調べてくれていた。名物は「ホルモンうどん」で、鉄板の上で注文した肉と野菜、うどんを甘辛いソースを絡めて焼いたもの。

 ※「入船」の写真を撮った筈なのにデータが消えている、残念!

鉄板コーナーに5人で座り、店の女将さんにホルモン、牛ばら肉とうどん3玉注文し、焼き上がるのをしばし待つ。

 ジロウが壁に貼ってある品書きに、“ごはん・味噌汁・キムチ、時価”と書いてあるのを見つけて、一同で暫く面白がった。確かコウスケが女将さんに聴いてみたところ、女将さんも吹き出すように笑って“そうなんだ。これを見た客がみんな面白がって聴いてくるのだけれど、これは先々代が書いたものでそのままにしてある”と。“勿論そんな高価なものを用意している訳ではない。ただ、私が嫁いだ時に旦那に替えるように言ったのだが、旦那はこうやってお客が不思議がって楽しんでくれるのだから、そのままにしておいたほうが良いと言ってね…..。実際にそうだった。お客さんがこうやって盛り上がってくれているのだから、今ではこのままで良いと思っている”とのことであった。

 一同その女将さんの説明に、納得し面白がる。このやり取りのおかげで、ローカルなお店に紛れ込んだよそ者とお店の女将の間にあった緊張感が解消されたようで、お互いに良かった。ナイスな質問だった。実際に出来上がった“ホルモンうどん”なるもの、甘辛いにソースに絡まって大変美味しかった。このチョイスも良かった。

 コウスケとジロウのおかげで、私だけでは巡り合えなかった味わいを得ることが出来た。ふたりに大変感謝。

 その後、店を出てブラブラと歩き、途中コンビニに寄って部屋呑みのための氷、炭酸水、ちょっとしたおつまみを購入して、ホテル午後930分頃に帰還した。

 


翌朝は、しまなみ海道・高速道路が大会開催の都合上、午前6時に閉鎖予定となっているため、朝530分にホテルを出発しなければならなかった。そのためにもその夜は早く就寝する必要があったのであるが、飲兵衛のコウスケと私にはちょっと呑み足りず、もう1時間程度と申し合わせて、私の部屋でウイスキーをハイボールで2杯ずつ程度飲むことにした。

 そこに、私にとっては意外であったが、ジロウもジュースを持って参加。内心少し驚いた。ジロウは全くアルコールを呑まないオトコで、従って酔っ払いを相手にするのは辛かろうと思っていたのだ。おつまみに鈴鹿サーキットのお土産“タイヤカス”というイカ墨つきのサキイカを持参してくれていた。なんでも鈴鹿サーキットで開催されるF-1グランプリには20年以上も通っているのだとか。彼はずっと熱心なフェラーリ・ファンであった。

 彼の存在は30年以上も前から知っていた。イチロウと私は高校時代からの付き合いで、イチロウの弟であるジロウのことはその頃から、彼と出会う前から噂に聴いて知っていたのだ。実際に彼に初めて会ったのは、大学時代の終わり頃で彼らの実家に遊びに行かせて貰った時だった。就職してからも23度彼らの実家に遊びに行かせて貰った時も、その度に彼はわざわざ顔をのぞかせてくれて、ひと時を一緒に過ごしてくれた。

 今思うと、多分アニキの友人として私に気を遣ってくれていたのだろうなと思う。

 私から見ると、ずっと数少ない長年の友人の一人だと思っていたのだけれど、よく考えてみればイチロウ抜きにしてこうして一緒に過ごすのはあまりなかった。私は元々激しく感情移入し対人距離を近くしていく性質なものだから、これまでにもついつい彼に対して図々しいことを言ったりしていた。でも、よく考えてみれば私の“一方的な”親愛の情表現であり、彼にははた迷惑だったかもしれないなと、ふと脱錯覚を覚えた。

 同時に何だか彼と改めて打ち解けたような気がしてとても嬉しかった。彼から見ると、益々私のおバカさ加減を知り扱い方に馴れて貰ったのだろうとも思える(笑)。

 午後1030分を過ぎた頃、コウスケから合図が出て3次会の部屋呑みはお開きになった。前々日、前日と、仕事の都合で深夜遅くまで起きて作業していたこともあり、少々寝不足で現地入りしたので、その晩のビール大瓶2本弱、ウヰスキーダブル程度で作ったハイボール2杯でかなり出来上がってしまったようだ。

 彼ら二人が去った後、すこし空気を入れ替えるために窓を開けてベッドに横たわりながら“何だかこの度の目的はこれで十分に叶ったな“と独りぼんやりと思い返していたら、いつの間にか深い眠りに陥ったようだった。

 

~完~

 

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