2014年11月27日木曜日

イチロウ行状日記~山間部を走るの事、後編②

新蕎麦を食べ庄原焼きを食べて十分すぎるほどお腹が満たされたところで、イチロウと私は再び自転車に乗り、国道432号を北上した。空はすっかり快晴となりヒツジ雲が浮かんでいた。空はどこまでも青く澄み、雲は低く緩やかに流れており晩秋の山間に来たことを実感。左右の田圃では既に稲刈りが済んでおりやや哀愁を感じさせた。432号を進んでいくと東西に向かって流れる 西城川に当たり、その橋を渡り左折、左手にその川を眺めながら下流に向かって走る。やがて国道62号との分岐三叉路に差し掛かった。川の下流方向は大きく左手すなわち西に曲がっており、国道62号がその流れに沿って走っている。

 
私たちは、432号を左折し国道62号に沿って山間に向かった。この辺りに来ると次第になだらかな勾配ではあるが距離の長い上り下り坂が繰り返されるようになった。この辺りに来るのは初めてなので、土地勘がなく、どのあたりを走っていたのかを詳述できないのであるが、庄原市口和町を北西に向かって走っていたようである。

 
この辺りは、ひとつの丘陵を越えると山間に山村が点在していて、そこには里山の風景が広がっていた。晩秋の柔らかい陽光を浴びて、山林の緑が美しく映えていた。この里山の風景にはいつも感心させられる。山際の雑草は綺麗に刈り取られ、掃き清められていて本当に美しい、日本人が古来から営んできた風景が今も残っているような気がする。イチロウや私が若い頃からとても好きだった風景が眼前に広がっていた。幸いなことに自動車もそれほど走っていなかったために、時には二人で並走しながら、「気持ちいいなあ。この風景は本当に素晴らしい」と語り合った。


 
イチロウはいう、「この景色はドライブするのにも楽しいだろうけれど、クルマではこの空気と一体感は得られないような。自転車のほうが、何倍もこの空気を楽しめるよ」と。

 
確かにそう思う。その日どうも日頃の運動不足が祟ってか、脚が重く上り坂ではイチロウに大きく引き離されたのだが、イチロウとの実力差を噛みしめつつも、上り切ることに専念し耐えてなだらかな上り坂を越えるとやがて下り坂がやって来て、山里の緑地(田畑)に向かって風を切って降りていく按配となっていた。あの耐えて上り切った後のご褒美のような下り坂で風に包まれて走る時の爽快さは、確かに自転車でしか味わえない悦楽だと改めて思っていた。

 
ひとつの丘陵地を越えたところで、イチロウが自転車を下りて待っていた。

「ほら、里山の撮影ポイントだろw!」 しばし休息しながら、辺りの景色を一枚撮った。


 
その後も私たち二人は、62号線を北西に向かって走行し口和町向泉地区に差し掛かった。ここは狭い谷間から広がる扇状地のようになっていて、そのまま北上すると186号線となり、私たちが進んでいた62号線は鋭角に左手に曲がりUターンするように南西に向かって走っていた。私たちも62号線に沿って今度はなだらかな下り勾配を下ることになった。そして、この狭隘な谷間から広がる扇状地の風景が素晴らしいので、イチロウをモデルにして記念撮影を2枚ほど撮った(笑)。

62号線を南西に向かってしばらく下ると、松江道の口和IC付近で国道39号線にぶち当たり、今度は左折して国道39号線に沿って緩やかに弧を描きながら南下することになった。

さていよいよ三次市に向かって緩やかな下り坂を南下していくことになる、この時点ではもう上り勾配もなくなり楽に勢いよく走行できるはずと思った矢先、左前方に道の駅を発見。イチロウが目聡くも「ワニ料理」なる幟を見つけてしまった(笑)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ※道の駅にあった水琴窟

 イチロウ「おい、ワニ料理だとよw。有った有った。何?三次で喰う予定だっただと?でもさあ、今から三次に下りていくと大体3時ごろだろう?店丁度閉まっているよ。食べられない公算高いな。ここで食べてた方が良いなあ、確実だもんなw。」

 “まだ1時30分だろうw?喰えねえだろうよ…….。”

 イチロウ「オレ一人でも食うぞ。ここまで来て喰わねえ手はないだろうw。何々ワニ南蛮丼セット?よし行くべ」

 “もう入りやがった、しょうがねえなあw”

 結局つられて私もイチロウの後に続いて、食堂に入りワニ南蛮丼セットなるものを注文。

この料理、ワニすなわちサメ(多くの場合はネズミザメ)の白身のから揚げに、やや酢が効いた南蛮漬けがごはんの上に乗っかる丼物に、かけそばが付いている定食だった。
 
 

 
ワニの肉は、想像していたよりも癖がなく淡泊な味だった。ちょっと酢が効きすぎていたのでハッキリと味として分からなかったけど、食べやすかった。それからここでもゴハン・庄原コシヒカリが本当に旨かった。庄原のヒトたちは美味しいお米を食べているんだな、これにはびっくりした。

 
結局二人ともこのワニ南蛮丼セットなるものをほぼ完食。お腹ははち切れんばかりとなり(笑)、腹を突き出したオッサンがそこには居た。この度自転車ツーリングは当初懸念していた通り、トレーニングからご当地料理・飽食自転車の旅へ様相が変わった。結局、イチロウの当初予定していた料理は全て完食w。果たして無事三次に辿り着けるか心配になりつつも、三度自転車にまたがりゴールを目指すことになったのだが、出発間際にイチロウめ「こうなったら三次に入ったら、三次名物のブランデーケーキをデザートに喰っちゃおうぜ。」と笑っている。この時は、さすがのお人好しの私も完全に無視w。「ともかく行くべ」と出発した。

 
その道の駅を出発して国道39号線を南下、出発直後になだらかな丘陵地を乗り越えると、後はしばらく下り坂となり快適な走行となった。再び、西城川に出会い右手あるいは左手に川を眺めながら三次市街地に入っていった。

 
三次市市街地に入ると北側の道路を東に向かって走る。スタートポイントの県立三次公園まであと23㎞となった時点で、イチロウが「そこだそこ」と右前方に見える和菓子屋を指す。

 
 
「土産にブランデーケーキを買って帰るべ」と笑っている。こうなると全く仕方なく自転車を停めてお付き合いで「三上貫栄堂」に入る。そこでばら売りしている「ピオーネ大福」「ブランデーケーキ」を各一個ずつ購入。これらは帰宅後食することに。イチロウは愛想よく店主のオジサンと話し込んでいたが、私の方はどうでも良くなっており(三上貫栄堂さん、ごめんなさい)w、さっさと店を出る。

 
その後、イチロウが「もうすぐそこだ」と言っていたゴールまで実はなだらかな勾配を持つ丘陵地帯を2つ越えることになり、これが実は一番つらかった……。満腹の状態で戦闘意欲も乏しく、ゴール前にして完全に気合もなく緩んだ状態で、トボトボと先ほど買ったお菓子の入ったビニール袋をハンドルにぶら下げて登り坂走る図は、全く無様な様相だったと思うw。


 
ともかくも予定通り、午後3時少し過ぎにゴールの県立三次公園に到着。イチロウのコース設定によると、全走行距離67㎞、獲得標高208m、所要時間約5時間15分であった。気持ち的にも胃腸的にも大変満腹感のあるサイクリングではあった(笑)。

後日、イチロウとこのサイクリングを振り返った時に、彼が語るに「どこかに出かけるときには、まずご当地のものを食べるところから始めて、その食べ処の点と点を結んで、行動の線にする」だそうな……。「後で喰いそびれたと後悔したくないからな(笑)」なんだとか。

 
そうか、今度コースは、奴の飽食旅の点をトレースしたコース設定だったのか........。今度から彼とトレーニングする時には気を付けておこっと(笑)。

ああ、そうそう。三上貫栄堂さんの「ピオーネ大福」と「ブランデーケーキ」を翌日食したが、結構旨かったですよ。ここに付記しておく。

 

~終わり~

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