3月14日(土)、午前中イチロウと私はルーチン業務をこなし、午後1時過ぎに職場を出発した。輪行バッグ、着替えなどを入れた袋、貴重品を入れたナップサックが手荷物の全てであった。
クルマで広島駅まで行き、近くの駐車場にクルマを停めて、新幹線で京都まで移動、京都からレンタカーで滋賀県長浜市に至る予定であった。前日まで気を揉んできた3月15日の現地の天気予報は、その朝には「曇り」若しくは「晴れのち曇り」となっており、“流石晴れ男がふたり居ただけのことはあったわい”と独りほくそ笑む。
土曜日午後の広島駅駐車場はいつも混んでいて長い待ち時間を覚悟していたのだが、実際には空きスペースが容易に見つかり、事は思いの外順調に進んでいるようであった。広島駅の地上駐車場にクルマを停めて、荷物を取り出し駅構内に向かったが、玄関周辺は工事中であり、輪行バッグを担いで歩くには少々難渋した。
広島14;52発、のぞみ東京行きの指定席を無事に確保。おにぎりとノンアルコールビールを一本買い込み同新幹線の16号車に乗り込んだ時は、余りの順調な滑り出しにホッとする思いであった。私の場合、何か楽しいことをする前には仕事やプライベートな事で難渋する場合が多かったのだが、この度は物事が万事うまく進んでいる。イチロウと“長浜入りしたらサバそうめんは喰えるだろうか、能登屋は予約なしで入れるだろうか?”などと軽口を叩きながら、ノンアルコールビールを飲みながらおにぎり食べていた。
ホッと一息ついた頃だった、福山駅に到着する前頃に、何か自分が新幹線に持ち込んだ手荷物が足りないことに気が付いた。
“あっ!、着替えを入れた袋を忘れている。あ、クルマの中に置いてきた。しまった。”
あの袋の中に、ジャージ、ウインドブレカー、替えの下着などを入れていたっけ・・・・。
早速隣に座っているイチロウに事の次第を話をすると、イチロウの表情が硬くなる。
「どうすんだ。ヘルメットはあるか?自転車用のシューズはどうした?」
不幸中の幸いか、ヘルメットとシューズは出発する直前に、イチロウからの勧めで忘れることになった袋から輪行バッグに移していた。
イチロウ、「じゃあ、その恰好で自転車に乗れるな?何、出来ないだと!じゃあ、裸にヘルメット、シューズの出で立ちで走れw!」
“そんなあ、ご無体な・・・・・。殺生でっせ・・・・・。”
全くのピンチ状態になった(トホホ)。どうすべか?もう棄権するか?今年も独りで近江八幡市散策コースに切り替えるか・・・・・・。つい口に出たのが、007がピンチに陥った時に流れるテーマで、「ターラッタ・タララ、タラーッタ・タララ……..🎼」。
隣でそれを聴いていたイチロウが、「本人はピンチに陥ったジェームズボンドの気分らしい。反省の色全くなしww」とツイート。私、すかさず「007カジノロワイヤル(1967)のデーヴィッド・ニーヴンでお願いします」と返信。イチロウ「言うとけ。奥さんじゃなくて俺で良かったなw」。 私「全く。二の句継げず。ジェイムズボンド卿の甥役のウディ・アレンな気分…….。」
ジロウ、そのやり取りを見て「おもしろくなってきたぜっ・・・」とツイート。
イチロウにそう突っ込まれて流石に参ってしまったw。確かにこれが嫁相手だとむこう1年は事あるごとに言われるだろうなあw。すっかりしょげていると、この度は参加しないコウスケから、彦根市内のスポーツ用品店を2-3情報として寄越してくれた。「全くかたじけなく、コウスケ殿………..」
イチロウ、渋い表情を保ったまま「しょうがないな、長浜市内でスポーツ店を探して回ってみるか」といい、取りあえずその方針となる。
そんなやり取りを隣で聴かされた若い女性、さぞバカオヤジの一行だろうと迷惑に思っていただろうなw。
京都駅に着いて、同駅から徒歩数分のところにあるトヨタレンタカーのカウンターに赴き、タウンエース(業務用)を借りる。午後5時頃に同店を出発、カーナビによると目的地には午後7時頃到着となっていた。
方向音痴の私が運転、イチロウがナビ係となる。名神高速・京都南口から高速に入り、滋賀県長浜市を目指す。その間、イチロウがスマホでスポーツ品店を検索してくれ、夫々の店に電話で自転車のジャージ・パンツは置いてあるか確認してくれている。
“おバカな連れで全く申し訳ない。本当に済まみませーん。”私、涙ちょちょぎれそうになる。結局、イチロウが彦根市内にあるスポーツ・デポという店舗に自転車用品が数多く取り揃えてあることを突き止め、長浜市に入る前に立ち寄る方針としてくれた。
「おばかなマサキですみません……」親しき仲にも礼儀ありで、お詫びを伝えると、イチロウ笑いながら、「まあ、楽しませてくれる奴だよな、全く」と応じた。
高速道路は、週末夕方ということもあり流れる交通量は多かったが、順調に進み、滋賀県彦根市までは後数分のところにあるパーキングエリアで小休止とする。
ふと、自分のスマホを見ると、愚息次男からの着信履歴あり。珍しいことなので、何かあったのかと電話を入れてみる。
次男「あのさあ、今本屋に来ているんだけど、デカルトの「方法序説」って家にあったっけ。じゃあ、ロックの「人間知性論」は?じゃあ、ヘーゲルは? ジャン・ジャック・ルソーの社会契約論は?”“ほら、今のうちに、興味ある本出来るだけたくさん読んどけ、って言ってたじゃん?。ないんだったら買って良いか?社会の倫理で習って興味あるんだよなあ……..w」
“オヤジをそう買い被ってもらっても困るなあ”“どうせ途中で読み飽きて、積読になるのが関の山だろうに。まあ、若いうちに難しい本にチャレンジするのも悪くなかろう”
マサキ、「わかった、買って良いから……。読み終わったら、まあ俺にも貸してくれ。」
次男、私の声色の暗さに気が付いたようで、「どうしたん?何かあったのか?忙しいところだったのか….。じゃあ、買わせてもらうよ」「イチロウさんと楽しんで来いよ…….。」
トホホ。バカオヤジは、今や、哲学や形而上学的なことを愚息と語る立場にございませんw。目下、形而下の俗っぽい、“明日の御衣裳もなくてどうするか”という命題で途方に暮れているんだよ……。全く….,おバカなるかなわが心、今やイチロウの好意に甘えている始末でございます……..。”
辺りはすっかり暗くなって、惨めな気持ちに浸っているとやたらお腹が空いてきた。先に長浜入りしたジロウたちも待たせている。パーキングエリアで、暮れなずんでいる場合ではなかった。先を急がねば……….。
そのパーキングエリアからものの数分で彦根インターに至り、そこから彦根市街地に入った。隣でイチロウが辺りを見渡しながら、「腹減ったなあ、あそこの焼肉屋入りたいな。おお、ここのトンカツ食いてえ。おお、近江ラーメンてのもあるのか」などと言い出した。
こっちも腹ペコなれど、寄り道させているのは私なので、そこはぐっと堪えて御愛想に徹するw。
やがて目指すスポーツ・デポに到着。去年のスタート/ゴールポイントであった運動公園の横にある複合ショッピング施設の一画にあった。
店内に入ると、あるあるw。ジャージにパンツに、グローブに……….。特に意識していなかったのであるが、幸運なことに少し多めに現金も持って来ていたw。
結局、冬用ジャージ・パンツ、グローブ、靴下を購入してしまったw。それにしても、この先しばらく必要がなくなる冬用を忘れたものを含めて2着も持ってしまった。ちょっと散財し過ぎたか、軽い罪悪感を覚える。それでもこのピンチをイチロウのおかげで何とかクリアすることが出来たのだから、イチロウには改めて感謝を。
イチロウ、「なあマサキ、お前、ブログのネタ作りにわざと忘れやがっただろうw?」だと、トホホ。
ここでサイクリング大会に出場する上での教訓を得た。
;①自転車に関する用具は輪行バッグに全部入れとけ。
②自転車、ヘルメット、専用シューズを忘れなかったら、何とかなるw。
この教訓をしっかり刻み込み、びわ湖沿いの幹線道路を使って長浜市のホテルを目指した。
午後7時前後に、ホテルに到着。先に到着していたジロウとヤマグチとも無事に落ち合うことが出来た。
ジロウ、この度の私の落ち度を「さすが、持っているオトコは違う」と笑っている。
“何を持っていると思ってんるんだか…………w。”
いやはや全く。ジロウともかれこれ25年以上の知り合いであるが、段々私のおバカぶりがばれてきているな。まあ、仕方ないか….w。
気を取り直して、昨年コウスケに案内してもらった、びわ湖料理「能登屋」に一同で向かったのであった。残念ながら、去年喰いそびれたサバそうめんの「よか楼」の営業時間は午前11時から午後5時までで、今年も喰いそびれてしまったw。
つづく
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