コウスケお勧めの焼き鳥屋で、まずはビールにて乾杯し、前回昨年の10月に広島で呑んだ後のことをちらほらと駄弁り始める。昨年11月に私とイチロウが渡辺貞夫氏のライブに行った模様のことから始まり、コウスケが一昨年12月のナベサダ氏とジャキス・モレレンバウム(チェロ)の共演コンサートを聞き逃してしまったことに言及。私が、「どうも君らは渡辺氏のことを疎かにしてやしないかw?」と軽く突くと、彼氏「いやあ、そんなことはないけれど。でも、ちゃんとナベサダ氏の自叙伝を読んで勉強しないとね」などと笑っている。
コウスケというオトコ、本当に喋り上手・聞き上手で、普段話題のない私の話に飽くことなく相槌を打ってくれたり、テキトーに話題を振ってくれたり、ええオトコだと思う。コウスケが注文してくれた串物や鳥刺しなどが次々と運ばれてきて、呑む方も熱燗に移行し、急ピッチで宴が進んだ。コウスケお勧めのお店だけあって、串物はどれも旨い。勧められるままに初めて食べた鳥刺しも、なかなかの味だった。注文した品をすべて平らげたところで、その店での宴を早々と終了させ、次のお店に移動。
再び渋谷駅に出て、スクランブルを渡り、駅を背にして道玄坂を斜めに横切り、確かもう二つぐらい大きな筋を渡って、路地に入るとそのバーはあった。
BAR BOSSA。このお店は、コウスケのtwitterでしばしば呟かれるところで、その名前のごとくBossa Novaを専門に店内で流しているらしい。雑居ビルの1Fにあって、私が勝手に想像していたものとは違い、かなり落ち着いた佇まいであった。エントランスを右に入ると、右手にカウンター席、左手にテーブル席が4つほどあったか。私たちは右手のカウンター席に案内してもらい、一息つく。
流れてくる音楽は当然ブラジル音楽なのだが、感心したのは全て(かどうかは確認していないが)LP盤のもので、スピーカーから時折レコード・ノイズが漏れてきて、それが妙に心地よかった。 まずは、赤ワインを夫々に注文して、二人の駄弁りを再開する。コウスケやジロウ達のこの店との出会いから始まり、互いに共通した知り合いのことなどを駄弁る。なんの話題からの流れかは失念したが、コウスケから実はジロウが大のアストラッド・ジルベルトのファンなのだということを聴いて、大変驚くとともに大変嬉しかった。
ジロウは、その道ではかなり有名なブラジル音楽通で、かなりの音源を収集している人物である。彼が、最近アストラッド・ジルベルトが5-6か国の言語で歌ったすべての音源を手に入れたことや、その中で「日本語が一番上手かった」などとツイートしていたのを知っていたのだが、それはあくまでの収集家としての喜びを表現していたものと勝手に理解していた。
実は、私は今でもアストラッド・ジルベルトが一番好きなのだが、それは気恥ずかしくて、仲間内には言ってなかった。所謂Bossa Novaファンと云われる人たちは、「Getz/ Gilberto」に始まり、「Café au go go」を聴いて嵌っていくのだと思われるが、アストラッドはあくまでもファンにとってその入門編に属するようなヒトで、その後興味が広がっていくと、マリア・トレド、シルビア・テレス、ワンダ・サー、レニー・アンドラージ、エリス・レジーナetcなどの歌姫に出会う事になる。その頃になると、入門編のアストラッドの格付けは自然に“過去のヒト”になっていく(のだと、勝手に思う)。既にその道のプロになっているジロウには彼女のことなど、彼の興味の対象になっていないものと思っていた。
“へー、ジロウが今も尚アストラッドが一番好きだなんてねえ”
なんだかとても嬉しくなるようなニュースであった。その日は、会うことが出来なかったが、ふと若い頃のジロウを想い出して懐かしくなってしまった。
その他ボサノバ談義をしていると、店主が気を利かせてくれて、懐かしいLPを次々にかけてくれて、大変幸せな気分になっていた。“ここは極楽じゃ~”と何度も口にすると、コウスケも嬉しそうに笑っている。その後も、酒が進み、夫々にワイン2杯、ウイスキーのソーダ割を3杯ずつ飲んだか。
楽しい時間はあっという間で、気が付いたらそろそろ終電の時間になった様子であった。コウスケ“そろそろ帰りますか?” 私“ここは極楽じゃ、帰りたくねー” コウスケ“良いからもう帰るよ”という事になり、大満足ながらも多少後ろ髪を引かれる想いでその店を辞したのであった。:次回から上京した折には、この店に必ず立ち寄ることに決めたw
(つづく)
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