2018年3月19日月曜日

この春と義理と~その3~


310日に開催された上司の退官記念祝賀会に出席し、同日は岡山市内にある家内の実家に宿泊した。

家内は実家の用事がある度に帰省していたのであるが、ここ数年子どもの受験があり、家族そろっての妻の実家への帰省・訪問が出来ずにいた。改めて思うに“義理”を欠いていた。

それならば、この際義父母への義理もこの際果たしてしまおうと、義父母宅へ1泊お世話になることにした。

その夜は、義父母宅への到着が午前0時を過ぎていたので、そのまま爆睡。

翌朝午前8時に起床し、今に入ると義父が既にテレビを見ていた。「昨日退院したばかりでなあ。まだ微熱が出て気怠いよ」という。見ると本人は病み上がりといった雰囲気で、顔がむくみ気怠そうに体を動かしている。「せっかく来てくれたのに、相手が出来そうにない。すまんねえ。」という。

何か義父孝行にお相手をせねばと想いつつも、本人の様子から一日ゴロゴロと横になって休んでいた方がよさそうだと察した。義父よりの「折角良い天気だから、皆でどこか遊びに行っておいで」と言葉に甘え、妻、次男と岡山の児島地区までドライブすることにした。

外に出ると、空気はひんやりとしていたが晴天で誠に気持ち良し、絶好のドライブ日和であった。岡山らしい風景を楽しみたいと思い、県道の児島・水島線なる道路を選んでクルマを進める。この道で妹尾駅付近を過ぎると、両側には田園風景が広がり眺めていて目に優しい、広い岡山平野を実感できる。しばらくぶりに走ってみると、住宅や商業用建物が増えてはいるが、まだ耕作地は残されていて、岡山の地が実り豊かなところであることを教えてくれる。




11時過ぎに児島駅近くの喫茶店「イーハトーブ」に到着。20代の学生時代によくここに通ったものだ。ケーキと紅茶の美味しいお店で、岡山市内からのドライブの休息に利用したものだった。店内に入ると、見覚えのある女性が我々を笑顔で迎えてくれた。確かこのヒトあの当時からいた筈、30年近く経っているのか、ずっとこの店を切り盛りしてこられたんだなと思うと、感慨深いものがあった。昨今個人経営の喫茶店が少なくなっているように思うのだけれど、そう云う意味でもこのお店は貴重だと思う。

店内のテーブル席の一画に座らせてもらい、3人が其々ケーキや紅茶、パフェなどを注文した。

私たちの後から少しずつ、他の客が入店し始める。私よりも年配の男性、中高年の女性グループなど、微妙に年齢層が高いw。若いヒト世代には喫茶文化はないのかしら….、そうなのかもね。




店内の調度や久しぶりの次男との会話を楽しみながら、運ばれてきたスコーン、ケーキを食べつつ暫し寛いだ時間を楽しみ、その店を離れる。



次に向かったのが、児島ジーンズストリート。岡山県児島地区は国産ジーンズの生産で有名で、近年では児島ジーンズとして売り出し、愛好家には有名となっている。私はジーンズへのこだわりはないけれど、でもこんな風に愛着のある街が地元の産品で全国的に売り出していることは喜ばしく、その様子を観てみたいと思った。




児島市街地商店地区から旧野崎邸に繋がる小路に大小のジーンズショップが点在。私のしるブランドとしては、BIG JOHN、桃太郎ジーンズなどがあり、ぶらぶらと通りを歩きながら、その2店舗に入ってみる。濃紺のデニム生地に糊がばっちり決まったジーンズは格好良く見えたが、その値段を見てびっくり! これは普段履きには使えませんw ファッションセンスのある方が着用したらよさそうで、私などのような服飾にセンスなく物ぐさなオヤジには必要のないものに思えた。

でも店舗や通りにはジーンズ好きのオジサンや若いカップルも多く訪れていて、このジーンズストリートと売り出している商工プロジェクトが成功することを密かにいる想いだった。

その次に向かったのが、妻のリクエストで児島地区から玉野市に海岸沿いに走ったところにある王子が岳の展望台。若い頃10代から30代前半にかけて岡山に在住しこの界隈には頻繁に来ていたのに、この山の展望台に上がるのはこの度が初めてであった。




展望台付近を散策しながら、春の瀬戸内海を眺めるのは誠に気持ち良かった。穏やかな日差しを浴びて水面が輝き、視界のずっと先には瀬戸大橋が遠望出来た。




山の一区画を利用して公園化されており、その遊歩道を数分歩くと別の展望台があり、その近くの急斜面ではパラグライダーを楽しむ人たちがいた。海側から山の斜面に向かって吹く風を利用して上昇していくパラグライダーのゆったりとした動きが何んとも気持ちよさそうであった。妻は独身の頃の想い出を私や次男に楽しそうに喋っていたのであったが、先に書いたように私はここに初めて来たのであり、彼女が当地で作った楽しい思い出を誰と作ったのかはこの際詮索しないでおこうw。


今回は、普段は私の誘いに乗ってこない次男が珍しく一緒にドライブに出かけて来た。このドライブの間、奴は口数少なく私や妻の手前勝手な思い出話にも付き合っていたが、一体何を思いながら親が連れまわした景色を眺めていたのだろう?

この1年浪人生活を送り、早々と浪人生活2年目を過ごすことが決まってしまい、普段は楽天的な物言いする奴も今回は流石に意気消沈しているようにも見えた。私も学生時代に大小の挫折を味わったことがあるが、春先の海をぼんやりと眺めて気持ちを取り直した(取り直すことが出来た)ことがあった。この風景が、奴の気持ちを少しでも穏やかにしてくれたなら良いのだがと、時々私の視界に入るその横顔を眺めていた。

夕方近くになり王子が岳から下りて、しばらく海沿いの道を走って玉野に向かいそこから国道30号線を使って岡山市内に戻った。

私が、「国道30号線の両側に広がる平野と田圃の風景が若い頃から好きだったのだよ」と助手席に座る次男に話しかけると、奴め柄にもなくしみじみとした様子で、「今日のドライブは本当に楽しかったよ」とボソリと呟いたのだった。

(おわり)






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