2016年6月30日木曜日

石見グランドフォンド2016体験記④~フィナーレ~

Check point④断魚渓を制限時間ぎりぎりの午後2;30頃にイチロウと私は出発し、国道261号に沿って下っていき、支流・濁川が本流・江の川と交わる因原地区に差し掛かった。本来であれば橋を渡って右折するところを、特に大会標識も関係者の指示も見当たらなかったものだから、イチロウと私はそのまま直進県道32号に入った。左右にカーブしながら緩やかな上り勾配が延々と続いていた。私は、イチロウ伝手に聴いた関係者の説明「この先はそんなに厳しい坂はないよ」から、何の疑いもなくゴールに導いてくれる道路だと思い込み、ピッチは上がらないもののペダルを漕ぎ続けていた。イチロウは彼のペースで遥か前方を先行した。

30分ほど県道32号に沿って走行していたのであるが、次第に自分の走っている行程に疑問を抱き始めた。先行している他の参加者にも、私の遅いピッチを追い越して行く者たちにも遭遇しない。どうもおかしい、断魚渓を出る時には確かに他の参加者は残り少なくまばらであったが全くいないわけではなかった。必ず私を追い越して行く者たちがいる筈、30分走っても誰も追いつかないのはおかしい。“コースアウトして、迷子になっているのではないか”と思い始め、路肩に自転車を停めて背負っていたバッグから地図を取り出して確認してみる。

すると地図を見るのが下手な私でも一目瞭然、先ほどの橋がある交差点を右折するべきだったことを悟る。完全なるコースアウト。迂回路は全くなし。来た道を因原地区まで引き返すしかない。イチロウは遥か前方を走行している。携帯していたスマホを取り出し、イチロウに電話してみるが、全く応答なし。困った。このままこの山道を直進すると、どうもcheck point①付近に逆戻りするらしい。

“ああ、大幅に遅れた上にドロップアウトかよう。”仕方ないか、そういうのも後で良い語り草になるか……。そう諦めがついて、兎も角も先行するイチロウをそのまま追いかけることにした。何処かのポイントで彼は私を待っているだろう。

しばらく緩やかな勾配を進むと、やがてトンネンルに差し掛かった。薄明りの中を進んで行くと、前方にヒトと自転車の影を認めた。更に暫くすると、イチロウが待っていることに気が付いた。

イチロウはにこやかに「いやあ、この中が涼しいから一休みして待っていたよ」と。私は、深刻気に「どうも俺たちコースアウトしているらしいぞ」と彼に伝える。

「えーっ!まじか。」「どうして。あそこの交差点はなんの指示も出てなかったよなあ」「ちくしょう!」

久しぶりにイチロウ殿の御怒りに遭遇すw

「ああ、もうやめだやめ!ったく……。」「このままふけるぞ!いいなっ!」

「御意。しかし、殿。この地図をご覧いただきたい。この複雑な山塊を形成している石見国をショートカットしてゴールないしは我々のチームカーに戻る街道はないのでござる。結局のところ、元のコースを使って帰還するしかございませんぞ。さすれば、日没までには無事にチームカーまでたどり着けましょうぞ。」「このような状況に殿を巻き込んでしまったのは、このマサキの不徳のなすところ。ひらにご容赦願いたく、後で十分にお叱りを受ける所存でございますが、ここは無事且つ安全に我がチームカーに帰還するのが先決。殿に置かれましては、全く不本意の事とは存じますが、来た道を戻りましょうぞ。戦略的撤退でござる」

「えーい、好きにせい!マサキ戻るぞ。ついてまいれ。」

みたいな、そんなおバカな会話をしたかどうかは記憶が薄れて明確に覚えていなかったけれども、兎も角も我々は上ってきた道を再び下って行ったのであった。

再び因原地区の交差点を戻った時には、合計50分のタイムロスとなっていたのであった。多分往復20㎞くらいは走ったのだろうなw。これを「Gilberto’s西日本支部石見大会中の特別訓練事件」と長く記憶に留めておこうw。

さて、大いに遅れに遅れて、江の川を上流に向かいながら三瓶山の麓・美郷町を目指す。緩やかな上り勾配道を進んで行く。どうも以前見た光景に出くわす。そうだった、今年の冬に次男が吹奏楽部の合宿が三瓶であり、その様子を観に行った時にこの道を辿ったのであった。クルマで通てもなかなか険しい道のりだったけれど…….。やっぱり、途中から道が狭くなったり、勾配がきつくなってきた。大会のヒトそんなに勾配きつくないと言ってたじゃんw。既に疲労の極に達していた両大腿が先ほどから再び攣り始める。攣り止め漢方薬は残り1包、どうしようかしばし悩むが、溜らず自転車を停めて最後の1包を飲む。たちまち効果が出てきて、遅いピッチであったが前進する。

美郷町市街地手前でイチロウが待っていてくれて合流する。

イチロウ「あのさ、もうcheck point⑥なんかほっておいて、そのまま帰るぞ。腹立つからさ、もう良いだろう」

マサキ「御意。殿、しかし折角ここまで来たからには、Gilberto’s健在なり、というところを者どもに見せてやらねば。それに、チェックポイントに行けば、その後の街道の様子についても情報が得られましょう。当地の地の利に疎い我らにとっては、情報を得ながら先に進むことが必要なのでござります。どうかここは忍の一字で忍んでやって下さりませ……

イチロウ「そちがそう申すなら仕方あるまい。ただし、わしは喉が渇いたぞ、アイスが喰いたくなってきたわい。小便もしたいぞ。」

マサキ「それならば、この先に確かコンビニがあったかと存じます。そこまで案内申す」

ってな、おバカな会話をしたかどうかは、今や我が記憶は曖昧になっている。

ともかくも美郷町市街地に入り、コンビニエンスストアで小休止を取ることにした。コンビニエンスストアで、用を足し、アイス菓子を夫々に購入ししばしの涼を得る。コンビニ前で小休止を取っていると、前の道を次々にサイクリストが通り過ぎていく。どうもcheckpoint⑥粕淵カヌーの里を出発してゴールに向かうヒト達であった。

不機嫌な態を崩さないイチロウ殿をなだめつつそのコンビニを再出発して、10分程度で走ると、午後430分頃にcheck point⑥「カヌーの里」に辿り着く。

チェックを受けようとするとなんとイチロウと私の番号の欄に「断絶」の二文字が鉛筆で書かれているではないか!確かに、大いに遅れたのは解っているし、その原因についても私たちが前のポイントを出る前にコース地図をチェックせずにコースアウトしたのも悪かったのであろう。

しかしだね……。断絶はあんまりだw。イチロウ殿をなだめすかしてやって来たからには、当方としてはちょっと納得がいかない部分があって、抑制的な態度を保ちつつも、先ほど因原地区の交差点でコースが分からなくなり迷子になったのであることを大会の係りの方に伝えた。対応してくださった係りのヒトが少し驚いて「あのポイントは係りの者がいた筈なのだけど。休憩で持ち場を離れていたのかもしれないですね」と返事された。

コースアウトについては当方の不注意も有ったし、特に私のペースが遅いこともあった。何かの行き違いであるべきものがなかっただけこと。私としては、別に先方に謝罪を求めるつもりもなく、我々一行の“嘆き”を多少なりとも発露したかっただけであった。



しばし休息を取り、午後450分頃ゴールのスタートポイントであった久手海水浴場を目指すことになった。




地図で見れば、山間にある美郷町から日本海に向かって走るのだから、今度こそ下りばかりの道程になるのではないかと期待していた。Check point⑥を出て国道375号に入り大田市を目指したのであったが、なんと再び緩やかな上り勾配に差し掛かる。

“ったく、最後まで上り道に泣かされるのかよ。トホホ。あ、でもここまでこの上り坂でオイラを悩ませるところを見ると、キッとこのピークを超えたら素晴らしい下り坂を用意してくれているのでしょ。そうでしょ。うふふ。もの凄く期待しってからね。頼むよ。絶対だようお”

何時の間にか、誰に話しかけるまでもなく、そんなことを頭の中で呟いている。体は疲労が溜り一日中サドルに押し付けられていたお尻の痛さは尋常ではなかった。なのに妙に頭の中だけエンドルフィン分泌全開でハイ状態w。軽い酸欠状態だったのかも知れぬ。

やがて、幾つかのトンネルが続く箇所にやってきて、あるトンネル内を走行している時に、どうも後方からヒューともウイーンとも表現し難い風切音が後方でしているのに気が付いた。最初はついに幻聴が現れたかと思ったりしていたのだが、でも距離にして数メートルから10m程度後方で、ぴったりと先ほどの風切音が鳴っている。そうか、ハイブリット車の音だね、これは。トンネル出たら追い越して行くねと了解出来て、私は自分のペースを保ちながら、走行を続けた。

トンネルを出ると風切音が聞こえなくなり、何台かのクルマが私を追い越して行ったのだが、再びトンネルに入ると再び先ほどの風切音が明らかに私との距離を保ちつつ後ろを走行しているのが分かった。

“ああ、大会オフィシャルのクルマか….。何でオイラの後ろをキープする?あれ、そんなにおいらヤバそうに見えるか?オイラが途中でへこたれたら、途中棄権を宣告するつもりかいな……。それは嫌だね、ここまで来たのだもの。午後615分がゴール締め切りならそれまでに絶対にゴールに入るけんね”そう念じてひたすらペダルを漕いだ。

トンネルを幾つか越えると、上り勾配のピークに達し、その後は谷間の下り坂に差し掛かった。次第に、前方に視界が開けてくる。遥か前方には夕暮れに染まった日本海、その手前にところどころ灯の灯り始めた大田市市街地が見えた。

“おお、。美しい。夕日は見えないけれど、紅色の空と日本海美しいじゃん。フィナーレ。大田市に凱旋!”頭の中は、多幸症全開状態となり、CGTVのテーマソング「ウイニング・ラン」のシンセサイザーでのメロディーが鳴っているw 気持ち良くなって、下り坂を思い切りペダルを回す。後方のオフィシャルカーにこのマサキは健在なり/Masaki is alive !というところを見せつけようと思った。

更に大田市市街地に入ってくると、前方に他の参加者がスローペースで走行しているのが見えた。そのヒト達を追い越すと、先ほどの大会オフィシャルカーの私への追尾が終わり、新たな追尾対象を見つけたようであった。暫く進んである交差点で信号待ちをしている時に、大会ステッカーを貼ったプリウスが私の横に停車したのを確認。このクルマにお世話にならなくて良かったw

大田市市街地に入ると、朝とは逆方向に走行していくので無理なく進んでいけた。幾組かの参加者の集団を作り走行していて、私は最後尾につけてゴールを目指した。やがて、朝見た畑の中の径に入り、低い丘を越えると久手海水浴場へ向かう径を左折して入った。ゴール付近では、大会関係者やボランティアのヒト達が我々を暖かく拍手で迎えてくれた。私も思わず嬉しくも有難く思い、手を振って応えてフィニッシュ。

到着時刻は、午後610分頃、最終制限時間午後615分にギリギリ間に合ったのであった。

この大会コースには悪戦苦闘したので、皆さんの暖かい拍手に迎えられて感動も感激もこれまでの大会以上に強かった。ゴールした参加者で混雑している駐車場内を自転車を引いてイチロウを探しながら歩いていると、独りの女性が優しい笑顔を浮かべて私に近づいて来てきた。

「ああ、ゴールおめでとうございます。ゴメンナサイ、後で会おうと言ってくれていたのに、私先に勝手にゴールしちゃって。」見ると、途中まで同行していた女性であった。先にゴールしていたのにそのまま帰らずにイチロウや私の到着を待ってくれていたのであった。あ、勘違いしてはいけないw。他のコースに参加していたその女性の連れの到着を待つついでに私たちを待ってくれていたのであろう。

ともかくも私にとってはちょっと意外なハプニングだったので、とても嬉しくもあり、その女性と同行できて楽しかったこと、それから彼女の忍耐強く頑張っている様子に感動していたことをお伝えし、同行して貰ったお礼を述べて別れた。




その後ゴールのチェックを受けて、イチロウと合流し、記念写真を数枚ほど撮影してもらう。


そして駐車場に移動し撤収。






帰路はイチロウが運転を買って出てくれて、彼の好意に甘える。その日は、お互いに自宅に帰っても晩飯がないとのことだった。国道9号を浜田方面に向かっている途中で、「何を喰うべか?」とお互いにアイデアを出し合っていたのであるが、そうやってイチロウと寛いだ話を駄弁りながら、暮れなずむ日本海を見ながらのドライブは本当に心地よかった。出来れば、もう一泊したいところであったが、そういうわけにも行かず。自転車も良いけれど、オイラはこうやってドライブしながら駄弁っているだけで十分なんだけどなと思った。



結局、イチロウの発案で、前日江津で喰いそびれたというか迷った挙句に不採用となった焼き肉店「共栄」で反省会を兼ねた晩飯を食べることになった。



ここのお店の名物は「共栄焼き」であり、注文して食べてみると美味しかったのであるが、私は疲労が優りあまり食が進まず。イチロウはどうもこういう外に出張った時は、何時ものごとく食欲が増すらしく他のサイドメニューにも手を付けてそれら大半を平らげたのであった。
              
                ※ 写真に写っている飲み物は、ノンアルコールビー  
                  ルですよ。


その後、二人ともこの度の石見遠征に大いに満足を覚えつつ、浜田道を使って広島を目指し帰路についたのであった。








この度の石見グランドフォンドについての個人的な反省点・印象は以下のごとくである。

・ともかく、私の準備練習不足が最大の反省点。

・このコースで設定された山坂道は初心者にはハード。十分に参加準備をしてから大会に臨めよ。

・でも、用意されたコース周囲に広がる緑豊かな景色は絶品で石見地方を多いに堪能できる。コース中に勾配が適度に配置され良く練られたコースだから、参加する価値は大いにあるよ。

・最後のチェックポイントでついムッとしてしまったけれど、コースアウトについては参加者自身も十分に気を付けないといけない。

・ただし、県外からの初参加の者にとっては事前に全部のコースポイントを頭に入れておくのには限界があるのと途中人里離れた少し寂しい山道を通過するので、もうちょっと各ポイントに標識があると有難かった。

・でも全体的な大会運営については大変満足しているし、各チェックポイントで参加者をもてなしてくださった方々や沿道で応援してくださった地元の方々には大変感謝している。

・それから、これも大きな要素だったけれど、島根県・石見の人々の人情・人品は本当に優しいよ。あなたにもきっと良い出会いが待っているよ、多分w



また、この大会に参加したいと思う。出来れば次回はロングコースに挑戦してみるかw。



(おわり)

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