2016年6月2日木曜日

石見グランドフォンド2016体験記②


515日(日)午前5時頃起床。シャワーを浴びて、前日買っていたおにぎり1個とパック珈琲を腹に収めて、午前530分頃にイチロウと合流。午前545分頃にチームカーでホテルを出発し、スタートポイントの大田市久手海水浴場駐車場を目指す。

辺りは既に明るく薄い雲があるがほぼ快晴、国道9号線を東にクルマを進めた。途中、仁摩温泉津道路なる自動車専用道路に入る。右手には、あまり見たことのない型の山塊、右手の山から左の海岸に複雑に伸びる稜線を見る。左手には温泉街があるであろう海岸はリヤス式海岸を呈していて、瀬戸内から来た我々には珍しい風景が広がっていた。この右手の山塊の中を自転車で走ることになるのであるが、果たしてうまく走り切ることが出来るのか、ハンドルを握りながら一抹の不安を覚えた。

イチロウが助手席に座り、ナビ役を務めてくれて、難なく大会オフィシャルが設定してくれた駐車場となる久手小学校に辿り着いたのは、午前630分頃。既にスタート受け付けと開会式は始まっている筈だったので、多少私は気がせいたが、イチロウは馴れた様子で泰然と構えている。自転車をクルマから2台下ろし、タイヤをはめ込むなどのセッティングし、その駐車場から自転車に乗ってそこからスタートポイントまで約10分程度の移動。




緩やかな勾配の坂を上がると、眼前に日本海が見え、海岸縁の道を左に折れると、スタートポイントの久手海水浴場駐車場が見えた。既に沢山の参加者が集まっていた。大体700人くらいの男女が終結していたようである。



早速大会事務局に出て、出走の確認を行いゼッケンのシールを貰って、ヘルメット右側に貼付した。ステージでは、来賓の確か大田市市長さんの挨拶があり、その後は大会事務局からのコース説明が続いた。「これはレースではなくサイクリング大会だぞ、無理すんなよ、交通安全に留意し自己責任で走れよ。」とマイクを使って宣うておられた。

“そうそう、これはあくまでもサイクリング大会なんだから、オイラのペースで走るよ。皆の者挑発すんなよ”と辺りを見回したが、皆それぞれに健脚自慢のお兄様方はやる気満々のご様子だった。夫々に御揃いのチームジャージを作ってグループでの参加が多いようであった。

イチロウに、「先に行ってくれたらいいよ。出来たらチェックポイントで待っててくれたら良いからさ。オイラは、自分のペースに合ったお姉さまを見つけて、その後ろをついて行くからさ」とジョークを醸しつつも真剣にその旨を伝えた。イチロウ「いやいや、まあ一緒に走ろう」と言ってくれる。




午前715分に我々が参加する140㎞ミドルコースと、200㎞コースに参加する者たちが20台ずつくらいの集団を作って段階的にスタート。因みに200㎞コースは、散々山道を走った後に三瓶山をアタックするセクションが設けられていて、イチロウはやる気を見せていたのだけれど、私がとても無理であることを理解していたため、200kmコースへの参加は来年以降のチャレンジに持ち越しとなっていた。

スタートポイントを出ると、畑の径(といってもきちんとした舗装2車線の道路)を通って、県道285を西に走り、やがて大田市市街地に入る。沿道のところどころで地元の方が「頑張って」と声をかけて下さる。こういう地元の方々の暖かい応援って本当に有難く思う。

それにしても、どうも私のペースが遅いらしく、やる気に溢れたお兄様方が次々と追い越して行く。私の後をフォローするイチロウはとてもじれったかっただろうと推察する。

大田市市街地を抜けてやがて県道46号線に入る。この道は世界遺産にもなっている石見銀山につながる道で、早速なだらかな斜度23%の上り坂となっていた。上り坂に差し掛かり益々私のペースが遅くなってきたため、イチロウに声をかけて先に行ってもらう。イチロウ、満を持したかのごとく、するするとペースを上げて先行しているお兄様たちを抜いてやがて見えなくなった。

その後も私は私のペースで走行したのであったが、ペースの遅い私の横を、「失礼しまーす、先に行かせて貰いまーす」と大きな声をかけながらやる気満々のお兄様たちが次々と追い抜いて行った。

“登り坂はいけんね。この斜度でこの為体だもの。先が思いやられるわ~。石見銀山か、出来ればクルマで来たいわな”と早くもヘタレ気味の誰にも言えない愚痴を頭の中でぼやく。

兎に角遭難せずに完走すること、その一念に徹することに腹を括り先に進む。




チェックポイント①(28㎞地点、制限時間9;30)には、午前9時前頃に到着。イチロウは既に、支給された石見ソバを腹に収めて私が来るのを待っていた。イチロウと言葉を交わすに、140㎞コース参加者中第2位でここに到達していたらしい。

済まぬイチロウ殿、早速足手まといになっとるなあ。支給されたソバの摂取(このソバ、もっちりとした食感で誠に旨かった)、水分補給、そして漢方薬を服用(これからの激坂に備えてこむら返り予防のため)をして、チェックポイント①を出発した時には、チェックポイントに残った者は十数名程度となっており、ほとんど最後尾集団の中にいたことが判明。

次のチェックポイント②(47.5㎞地点、制限時間AM11;00)まで更に勾配が厳しくなる山道を20㎞走らねばならない。既に最後尾集団の中にいて、これから上り坂が続くためペースが更に遅くなることが容易に想像され、大変焦る。焦るけれども勾配は更に厳しくなり、ペースは益々遅くなるのだけれど、ペダルを強く踏み込めば、両太ももが攣りそうで、力を加減しながらペダルを回して前に進むしかなかった。

イチロウがしばらくし先行して、道の分岐点など各所で私が来るのを待つというチーム行動(w)が繰り返された(わー、思い出しながら書いてみても本当にイチロウには悪いことしたなあ)。

今、大会オフィシャルが支給してくれた地図を見て道路地図と照らし合わせながらトレースをしてみるのだけれど、どこを走ったのか判然としない。県道46号線に沿って走ったと思えるし、途中のところどころ塗装が剥がれたり砂利になった山道を走っていたところを思いだすと何処かの細い道を一部使ったのようにも思えるし。

ただ、①から②に向かう木立に囲まれた道は美しかったな。登り坂のピークを越えると沢に沿った下り道で、木々の間から初夏の陽光が射し、周囲には沢の水の流れる音と野鳥の声以外には聞こえない静かな空間があった。ペダルを回すのを止めて下るままに自転車を走らせていると、ここに来て良かったと思えた。沢に沿った細い下り道を進んでいると、イチロウが自転車を停めて待っていてくれた。「マサキ、ほらカジカが鳴いているぞ」と声をかけてくれる。「カジカってなんだ?」と返すと、イチロウはのんびりとした声で「カエルの一種だよ」という。

“ああ、これが大会ではなくて、個人的なツーリングだったらなあ”

“元生物班としては、その沢に降り立って生き物見物が出来ただろうに。イモリやサンショウウオがいるかもしれないだろうに。”などと思うのだが、最後尾にいる我々は森林浴をしながら、生き物探しを楽しむゆとりは無くとにかく先を急がねばならぬ。まずは制限時間内にチェックポイント②桜江に辿り着かねば。名残を惜しむ暇もなくその森を下っていった。




チェックポイント②桜江(47.5km地点、制限時間11:30)には、午前1040分頃に到達。廃校となった小学校跡地に設けられていて、その木造校舎の佇まいがなんとも懐かしくて良い雰囲気であった。大会オフィシャル・ボランティアの方々が用意しくれた、バナナ、練り物、梅干しがとても美味しかったなあ。「どうぞ好きなだけ食べて下さいね」と女性の方が声をかけてくれて、有難かった。そろそろ両大腿とお尻が痛くなり始めていた。

「あの校舎を眺めて弁当でも食いて」と内なる願望が湧いて来ていたのであったが、そろそろ制限時間が迫って来ているらしく、他の参加者の姿もまばらであり、ボランティアの方々の「そろそろ片付け始めようか」等の声も聴こえて来た。

そろそろ出発せねばならない。次はチェックポイント③旭(66㎞地点、制限時間12;30)と云うところを目指すことになるのだが、ここからチェックポイント③~④までの区間がこの140㎞コースの最大のハイライト・難関セクションとなるのであった。



(つづく)

0 件のコメント:

コメントを投稿