前夜祭の参加者は、トウヤマ、ヒサシ、カシワギ、タカヒロと私のオトコ5人と女性は紅一点のメイコ、計6名だった。11月22日19:00過ぎに、広島中心部にあるホテルロビーで待ち合わせとし、私以外の者は県外から三々五々に集まって、再会を祝して食前酒で乾杯。カシワギは最遠方からやってくることもあり、前夜祭会場のレストランに直接駆けつけることになっていた。
開始予定時刻20:00の10分前に、徒歩で会場となるレストランに移動。会場は、モダンスパニッシュレストラン「L’ermita」さん。広島平和公園のほとりを流れる元安川の川べりの雑居ビルの2F3Fにあって、オーナーシェフとフロア担当2人で運営している小さなレストランである。この度は残念ながら参加出来なかったイチロウご推奨のレストランで、私が訪れるのもこの度が初めてのお店であった。
広島ではかなりの有名店で、予約した際のやりとからちょっとした緊張を覚えて訪れたのであるが、フロア担当女性の優しい笑顔に迎えられて3Fの個室に通されてほっと胸をなでおろした。6人掛けのテーブルに、私が窓側の右端に座り、時計回りにタカヒロ、カシワギ用の席、その前にメイコ、ヒサシ、そして私の真向かいにトウヤマが腰かけた。カシワギの到着まで、それぞれがCAVA、名前は忘れたけれどもスペイン産ビールなどを食前酒に注文し、ホテルから続くおしゃべりを続けた。
20;40くらいに、カシワギ登場。彼曰く「やあ、広島空港から市内までこんなに遠いとは・・・・、おまけにタクシーに祟られちゃってさ。連れていかれたホテルも違えば、ホテルからのタクシーも全然捕まらなくってさ~」と爽やかな笑顔を浮かべている。無事に着いてくれて良かった。彼は、この前夜祭のためだけにやって来てくれて、翌朝7:00過ぎの羽田行きの飛行機で帰るという。本当にありがとね、わざわざやって来てくれて。
そこから、食事に合うワインをフロア担当女性にお任せしコース料理がスタートとなった。私は、しばらく正面に座ったトウヤマの近況を聴いていた。地元の企業に勤めて、実家から通勤中。下のお子さんはまだ小学4年生。これまでFace Bookに家族写真などを載せていたものだから、最近も家族であちこち出かけているの?と問うと、「上の子が受験期に差し掛かっているものだから、思うように出かけられなくなったんだよね」と教えてくれた。
そんな差しさわりのない話をしていたところ、ヒサシが「あのさ、カシワギとサトエはいつ深い仲になったの?」(実際にはもっと直接的な表現であったが、ここに書くのが憚られるのでかなりマイルドな表現にしたw)「あのさ、あんな狭い空間でさぞむずかしかったと思うんだよね?」と続けた頃には、流石のカシワギも戸惑ったような腹が攀じれ返るような大笑いを浮かべていた。視線を少し移すと、ヒサシの横で、その質問にメイコが身構えるような当惑の笑みを浮かべている。
カシワギとサトエ、そしてメイコとトリイは、高校1年の頃から付き合い始めたカップルで、それぞれにお似合いで周囲の者から見ると納得のカップルだった。メイコの先ほどの戸惑いの笑みは、ヒサシの発した同じ質問が自分に降りかかってくるのではないかという身構えのように映り、その様子に私の腹筋が攀じれたw。
ヒサシの質問で、その場の空気が弾けたようになり、その後しばらく下ネタめいた話題になったのであるが、概ね省略w。話の流れから「マサキは最近どう?」と聴かれ、「もう俺は賞味期限切れたw」と返したというあたりで留めておくw。
ヒサシは、当時、カシワギとサトエの馴れ初めにも立ち会っていたらしく、その他、誰と誰が付き合っていたなどと、私なぞは知る由もなかったことを目撃したり、記憶に残していた。このオトコ、当時私は全く気が付かなかったのだが、とても情報収集能力に長けていたことを知り、妙に感心してしまった。
メイコ。彼女とゆっくりと話をするのは実はこの度が初めてだった。彼女は少女時代から美人で明るくて、学生時代通じて男女を問わず人気があって、私なぞが近づく隙がなかった。この度初めて彼女の性格を知ったような気がしたが、ストレートな物言いに表裏がないヒトのようで今でも大変魅力的な女性である。彼女は、段々アルコールが進むにつれて元気が増したようで饒舌になって当夜は私達を大いに楽しませてくれた。
彼女は折角私に対して、あれこれとツッコミやボケを入れてくれていたのに、私は「そうかいな」などと返すのがやっとで、もう少し気の利いた合いの手を入れることはできないものかと己の話術力のなさに辟易するのだけれど、ないものは仕方がない。でも、30数年の時を経てこうしてざっくばらんに話し合えるようになったのだから、私としてはそれで充分だった。
カシワギ。会開始早々からのヒサシの質問を笑顔ではぐらかし、大人の対応で上手に裁き、その後に続くメイコの突込みにも笑顔で応じていた。カシワギ・サトエ夫婦とメイコの交流は今でも親密に続いているようであり、時々3人で旅行に出かけているとの事。この度の同窓会と武術の後輩の試合が重なり、彼としてはその後輩のセコンドに付く義理もあり、忙しい時間を割いて前夜祭のためだけに東京から駆けつけてくれた。寝坊をして翌朝の飛行機に乗り遅れるわけには行かないから、「朝まで俺に付き合えよ」と一同に笑ってけしかけてくれた。私が、「申し訳なかったね、わざわざ広島まで来てくれて」と声をかけると、彼曰く「だって、オレ必ず来るって言ったぜ」と。わー、感激だな。そんなふうに義理堅く思ってくれていたんだ。彼は、学生時代から男気のあるオトコだったな。ワシモコンナオトコニナリタカッタ。
タカヒロ。学生時代からいつも明るくて人好きで優しく接してくれる男だった。学生時代は、私とは部活も違えば、普段行動を共にするメンバーも違った。ただ、彼の人物像に好感を持つひとつのエピソードがあって、それは彼が人生で初めて顔の髭を剃る時に、彼の父親が彼の顔の「剃り初め」を施したとのこと。それを短文にしたためて国語の時間に発表した。なんだか良い話でその後も長い間私の心に残っていたのだった。自分も愚息共の成長過程でその時を待ったのであるが、うちの愚息共は体毛が薄くいつまで経ってもその時が来ないままで、気が付いたら嫁が夫々に電気髭剃りを買い与え、勝手に剃りやがったw!
高校卒業後も同じ大学に進んだが、そこでも彼と交わる機会は少なかった。就職してしばらく同じ部署で働く機会があった。その時には、仕事面でもメンタル面においても、私は彼に随分支えられて乗り切ることが出来たと自覚することが有り、その時以来私は彼に全幅の信頼を寄せるようになった。
実はこの同窓会に参加するきっかけも彼から貰ったようなものだった。6年前に神戸で開催された同窓会に初めて出席した際には、再び交流し始めていたコウイチから直接誘われたのであったが、彼とはいつでも会える気がしていたのでまだ躊躇いが残っていた。何度かのやり取りの中で、彼が殺し文句としたのが、「タカヒロが会いたがっているよ」だった。コウイチへの義理もあるけれども、ある意味恩人のタカヒロには仁義は切らないといけないだろうなと覚悟を決めて参加したのであった。タカヒロとはその後Face Bookで繋がって時々連絡を取り合っているのだが、前回同窓会の翌日にタカヒロ、イチロウと私でサイクリングに出かけたことを思い出してくれて「また、一緒にサイクリングに出かけたい」と言ってくれている。彼の言葉には、ノリも悪いし人付き合いの下手なイチロウや私に対してのある種の愛着を示してくれるようであり、本当に有難く思っている。
同夜は、彼と何をしゃべったけ?アルコールが早々に廻り始めてあまり覚えていないw。タカヒロを中心とした空気と、メイコ、ヒサシとカシワギの弾んだ話題に私は黙って耳を傾けているのが大変心地良かった。
ゆっくりとコース料理が進み、その間フロア担当女性の料理説明を聴きながら、一同それぞれのお皿に舌鼓を打ち異口同音に感心し楽しんだ。途中からカシワギ夫婦とメイコがスペイン旅行に出かけようという話題になり、それがフロア担当の女性の説明と程よく絡んで、私たちとお店側とのコミュニケーションも楽しく深まったようであった。コースが終わったのは23;00前頃。最後にオーナーシェフが挨拶に現れて、一同それぞれにお礼を述べて、記念撮影を撮って前夜祭1次会は無事終了。
「L’ermita」さん、幸せな時間を提供してくださってどうもありがとう。またこの店は必ず再訪しようと思う。これを読まれた方で広島に来られる機会があったら、是非訪れてみてください、絶対に素晴らしい味に出会える筈....。
その後、私たちは二台のタクシーに分乗し、広島市流川界隈にある「ワインサロン中村」へ。このお店は私が普段利用しているワインバーで、オーナーのナカムラさんが開業して今年で18周年を迎えたお店。広島でワインと言えば、このお店。私は開業当初から年に2-3回のペースで通っている。数年前に、タカヒロとカシワギが彼らの属する職能団体の会議が広島で開かれた際に、私が案内をして連れて来たことがあり、彼らも気に入ってくれたようだった。
「L’ermita」さんで、私たちは既にワインを3本開けていたので(しかし、私を含めてよくアルコールが入る面々だなw)、何か美味しいものを一本だけ開けようということになった。タカヒロにチョイスをお願いした。
先ほど1次会の続きで2次会の雰囲気も楽しく賑やかで……、ああ、もう何を話したのか大半を忘れてしまったw。メイコが、「今度は、私とトリイが幹事で、奈良京都でするからね」などとハッキリと確信に満ちたようなノリで話していた。いきなり彼女が「マサキも絶対に来るんだよ!」とこちらに振ってきたものだから、素直に「うん、ありがとう」と返せば良いものを、ついはにかんで「オレ、その頃になるとつる剥げているから、恥ずかしくて出られないかも知れないよ」と冗談半分で返すと、彼女はまじまじと私の頭髪を眺めて「うん、マサキは剥げても許す!」だってw。また腹筋が崩壊しそうになったw。
しばらくするとナカムラさんがやってきて「皆さん、同級生ですか?良いですね」と声掛けをしたので、私が「ナカムラさんも確か同じ年だったよね」と振ると、メイコが「そうなのか」と応じ、その後彼女はナカムラさんに親近感が湧いたようで、事あるごとに「おーい、ナカムラ~」などと叫んでいたっけ。このヒトは本当に明るくて屈託がなくてええオナゴやなあ。
そこのお店には、営業終了の2:00まで居て、ずっとしゃべり通しだった。多分他愛ものない話題を続けていたのだと思う。それはまるであの頃週末になると高校寮の一部屋で夜が明けるまで、他愛もないことを語り明かしたノリと何も変わることないものだった。
それでも、カシワギから課せられた「朝まで」にはまだ時間が余って、ナカムラさんに紹介してもらったショットバーに徒歩で移動。トウヤマはその時点で分かれてホテルに帰った。ナカムラさんが親切にも道案内をしてくれて、3次会の会場へ。30分程度ナカムラさんに付き合ってもらって、乾杯。もうその後何を話したかを全く覚えてないw! 午前3時30分頃、タカヒロからそっと「今日の遠足のことがあるから、マサキ良いよ。俺とメイコでカシワギの面倒をみるから」と合図をくれて、一足先に帰らせて貰った。
なんだかな~。みんな30数年の時を経てもぜんぜ変わらなかったな。ただ、恐らく高校時代のままの「自分」だったら、果たしてこの会を主催出来ていたかどうか、そして最後までみんなに付き合えていたかどうか。
あの頃の自分を振り返ると、コンプレックスの塊故に頑なで、“普通”を頑張って装っている反面内実はゆとりがなくて、結果的に表現型はストレンジだったような。事前に連絡を取り合う時にメイコが私に言ってくれた「大人になった今だからこそ、色々話すことができるよね」との言葉、本当に正しくその通りだったな。
帰りのタクシーの中で独り、同夜の会のこと、集まってくれたメンバーそれぞれの当時の想い出を振り返っていたら、「ひょっとしたら、私はメンタル面でやっと彼らに追いつくことが出来たのかもしれないな」という想いが湧いて来て、そう確信すると急速に心地の良い酔いが全身を包んでくれたような気がしたのだった。
(つづく)
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