2015年11月10日火曜日

“独りNabesada祭り”~音源集めの苦闘とその後の幸せ編~

暫く空いた時間を見つけて、渡辺貞夫氏のdiscographyを眺めては、ネット通販サイトで「これは」と思うCDを見つけてポチるという作業を断続的に続けている。正式なご本人のアルバム作品は全部で70作ある様子で、それに比べてネット上で流通しているものは限られていて、再発されていないものは中古盤にプレミア価格が付いているものが多い。

 


例えば、このCDには中古盤で11万円強の値段が付いていて、バカラック好きのボクとしては十分に興味をそそられるのだが、とても手の出せる代物ではない。
 
70年代後半のフュージョン期以降の作品であれば再発されて新譜・定価で販売されているものが多いのだけれど、目下の課題は60年代から70年代に出されたものを中心に聴いて行くことと思い定めているので、取りあえずこの辺りの作品群は後回しにしようと思っている。

 
自分の中では、更に目標を拵えていて、取りあえず1113日のご本人のジャズカルテットのコンサートまでは、なるべくバリバリと演奏しているジャズ系のアルバムを聴いてその予備学習とし、そのコンサートが済んだ後は、126日の「Naturally」フォローコンサートまでに、ボサノバ・ブラジル系の作品の学習をしていこうかしらと考えていた。

  これはあくまでも自分のお小遣い資金と相談しながらの、一定の限界はあるのだけれど…….

これまでに集めた7-8枚のCDは、「Naturally」以外、アフロ・ジャズ、フリー、ジャズロックテイストものと、どれもエネルギッシュであり、あの時代を感じさせてくれるなかなか興味深い作品ばかりではあったのだが、スレートアヘッドなジャズ演奏作品群にこれまで出会えていなかった。同氏の公式ウエブサイトのdiscographyに立ち戻り、色々眺めてみると、Great Jazz Trio/ Hank Jones(p)Ron Carter(b)Tony Williams(ds)と共演した作品がふたつあった。

I’ m Old Fashioned(1976)、「Bird Paradise(1977)がそれらで、ネット通販サイトで探すといずれも中古盤でプレミア価格がついていて、暫くポチるべきかパスするべきか迷っていたのだけれど、次第に少々高い買い物でもこの際手に入れておくべきではないかと思い始め~この辺り自己洗脳の何ものでもないw~、覚悟を決めてポチってしまった。

ポチった後で、少々高い買い物に軽い冷や汗をかいてしまったのが、先週の土曜日午後。

 

ネット通販サイトだけではどうも選択肢が限られているようであり、欲しいものには大概プレミア価格がついていて手が出しづらい。“ここは一丁、明日日曜日で仕事もオフだし、CDショップに出かけ、店頭で直にCDを手に取って選ぼうではないか”と独りほくそ笑み(というのは、CDショップに出向くのが、ボクの学生時代からの数少ない楽しみのひとつだったものだから)、ネットで市内の比較的多くの中古盤を取り扱っているであろうショップを見つけて日曜日にかけることにした。

 

当日、家内の買い物に付き合い中心街に出て、“徳”をある程度積んだ後に、駅近くにあるCDショップに赴く。家内はクルマで待っているとの事で、独りでその店内に入ったのであるが、ポップス・ロックの中古盤は店内の大半のスペースを割いて取り揃えてあるものの、ジャズコーナーは、幅1.5m高さ2m程度の棚全面程度しかなく、そのスペースを見つけた途端悪い予感がした。

 
案の定、渡辺貞夫氏のモノはこの1枚しかなく愕然とする。

 


“なんたること、世界のナベサダですぜ。これはあんまりじゃあないの”。

でも考えてみるに、中古盤のCDの流通はメインがネット通販になっていて、店頭販売なんて効率がわるいのだろうな。CDがメディア媒体として衰退していく昨今、その中古盤を求める者なんてマニアと呼ばれるヒトたちなのだろうから。店頭に並べて何時やってくるか分からない一部のマニアを待つよりは、積極的にネット流通に乗っけた方が商売の効率としては格段に良いよね。

 上記したCDは、目標とした作品ではないけれど、折角やって来た証・そして釣果として1400円で“引き取る”ことにして、スゴスゴとその店から退散したのであった。

 この「Remembrance(1999)という作品を自宅に帰った後に聴きてみたのだけれど、帰宅直後の当てが外れて意気消沈していた気分を払拭するには十分な出来栄えで、とても嬉しくなった。当時のNYの実力派・若手ミュージシャンと共演し制作されたとのこと。ストレートなジャズ演奏となっている。

90年代後半のジャズと云えば、ベテランのジャズファンに言わせると「大人しくなって物足りない・創造性に乏しくつまらない」と言われていたものだ。確かにこの作品において脇を固めるミュージシャンの演奏は上手く洗練された演奏スタイルではある。渡辺貞夫氏の70年代の作品に登場するミュージシャンの演奏と比べて大人しいといえばそうだけれど、その端正な音作りはこの頃のNYのジャズミュージシャンのスタイルなのであり、これはこれで良いのではないか。それに渡辺貞夫氏の演奏スタイルの特徴のひとつ、メロディアスなラインを辿るソロ演奏と上手くマッチしているように思えた。

 思わず嬉しくなって、F.B.に断片的にこのCDの購入と感想を乗っけてみる。

 この行為が後にボク個人の中で強い衝撃を生むきっかけになるのだが、それはまた別に書こうと思っている。
 
 

週が明けて、月曜日にポチっていたCD2枚、#1I’m Old Fashioned」、#2Bird of Paradise」が手元に届くが、内的な動揺と仕事が繁多であったため聴くことが出来ず、一日経った夜の、つい先ほどから聴き始めている。

 1-1)Confirmation、#22)Donna Leeで、パーカーばりのアルトサックスが炸裂してご機嫌な気分となる。“渡辺貞夫氏のオリジンここにあり”という感じで聴いていて楽しい。

ボトムラインでグイグイとドライブをかけてくるRon Carter(b)、美しいフレーズを随所に散りばめて曲に彩を加えるHank Jones(p)、派手さはないものの確かなリズムを刻むTony Williams(ds)、このThe Great Jazz Trioの面々は当時ファーストコールと呼ばれる一流ミュージシャンだったし、個人的にも大好きだった。渡辺氏の演奏は、この3人と十分以上に渡り合い、彼らを説得させるだけの技量とマインドを持った演奏になっていると思う。この4者が何の違和感もなく融合している。

 この度触れた3枚のCDを聴いてみて思ったのだけれど、同氏の長いキャリアの中で色々なジャンルを演奏して来られたのだけれど、やはりそのオリジンはストレートアヘッドなジャズにあるのは間違いないのだろうなということと、それと基本的にその演奏スタイルは明るくて、何人をも魅了するエネルギーを有しているのだろうなということだった。

 同氏のこれらの作品を聴きながら思いだしたことがひとつあって、大変個人的なことなのだけれど、それは「ボクはジャズが好きだったんだ」ということだった。随分久しくジャズを聴いて来なかったし、ジャズ好きであったことを忘れていた。そのことを想い出したことで十分に幸せな気分である(相変わらず能天気ではあるw)。

そう云う意味では、渡辺貞夫氏は音楽の“伝道師”的存在なのだと言っても全く大げさな表現ではないように思えた。

 

(つづく)

 

 

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