Sadao Watanabe Quintet 2015 in Hiroshima
2015年11月13日(金) p.m 7:30 開演
場所:広島 LIVE JUKE/ 広島市中区8-18 クリスタルプラザ19F
出演;渡辺貞夫(As)、林正樹(Pf)、コモブキ キイチロウ(B)、石川雅治(Ds)、ンジャセ・ニャン(Perc)
※ 当日演奏された曲目については、知らないタイトル曲があったり、記憶錯誤があるため詳細を書き留めることが出来ません(ゴメンナサイ)。
11月13日、待ちに待った渡辺貞夫氏のライブを観に行ってきた。当日は生憎の雨模様で、市内は各所で交通渋滞あり、会場のJukeに着いたのは開演10分前だった。イチロウは既に到着していたが、やはり同じような事情でボクが辿り着いた直前にやって来たのだという。
会場のライブハウス内に用意された席はほぼ満席であった。ざっと見回してボクらと同年代からそれ以上の先輩諸氏が多いようで、100名前後くらいの聴衆が収容されていたようである。
程なくご本人がメンバーを引き連れてステージに登場。
ご本人がマイクの前に立ち「皆さまお待たせしました…….。どうぞ、最後までゆっくりとお聴きください」と挨拶、その声、白髪、顔に刻まれた皺に、流石に同氏の御年を思わずにいられなかった。
「まず1曲目は、フェリシダージです」と言われた時には、内心“ええ?もうその曲からですかあ?”と内心焦るw。
実は、直前までこの度のライブは、勝手にストレートなジャズ系の曲が取り揃えられるだろうとの期待・予想していたのだが、前々日にポスターで当日の出演メンバーを確認したところ、そのなかにンジャセ・ニャンというどう考えてもアフリカ系のミュージシャンがいることに気が付き、演奏曲目は“なんでもありだなあ”とイチロウと予測し笑っていたのだった。
いきなりボサノバのスタンダードで入ったのと、この「フェリシダージ」はどちらかと云えば、会場が盛り上がるコンサート半ばか終了間際で演奏されることが多いとの個人的な偏見があったものだから、出鼻から予想を裏切られた格好になってしまった。
それでも、その演奏はご本人にとって十八番のひとつにされている曲なのだろう、いきなり快調な滑り出し。サックスをひとたび演奏し始めると、先ほどまでの御年を感じさせる風貌はどこかに飛んでしまって、引き締まった表情に時折鋭いまなざしを見せ、衰えを全く感じさせないエネルギッシュな演奏となっていた。1曲目から、Nabesada ワールド炸裂という感じで、瞬く間に彼らの演奏に引き込まれてしまった。
続いて、1015年10月に発売されたアルバム「Naturally」から4曲くらい(だったか?)。
(記憶に間違いがなければ、Naturally/ Junto Com Voce/
After Years/ Bem Agora)
“Naturally系は、そのフォローコンサートまで取って置いて欲しいなあ”と内心焦るも、実際にその演奏が始まると大満足w。当初CDで聴いた時には、どの曲もあまりピンと来なかったけれど、小編成で演奏されると返ってその曲たちの良さが分かりやすいし、渡辺氏の艶やかなサックスの音色が際立って、とても良かった。特にアルバム1曲目に収録されている同タイトル曲Naturallyは、軽快でアップテンポのジャズ・サンバ曲で同氏の特色が良くあらわされた佳曲だと思われ見直してしまった。
1stsetの構成の中で際立って印象深かったのは、これらのシリーズの後で演奏された、タイトルは分からないのだが、ンジャセ・ニャン氏のパーカッション・ソロとボーカル(渡辺氏の解説によると、セネガルの神様へのお祈り)から入り、続いてファンク調のナンバーに展開する演奏曲であった。渡辺氏のアフリカ音楽への傾倒・共感性とジャズに留まらないジャズロック・ヒュージョンなどアメリカ音楽全般への愛情が窺える演奏でただ単純に“カッコ良し!、イイェーw”と声を出したくなってしまった。
そして1st set最後は、ボサノバのスタンダード曲「Chega De Saudade」でノリノリのうち終了、約15分の休憩に入る。
離れた席で聴いていたイチロウと合流し、しばし語り合う。お互いに「来て良かったなあ」と。イチロウ、やや紅潮した面持ちで気分が高揚している様子。「スゲーよなあ、失礼だけれど、82歳とは思えぬサックスの音色だし、全然息が上がってないもの」「Naturallyは、CDのアレンジよりも、こっちにアレンジが良かったよな。」「聴きに来て大正解だったような」などと言っていた。
“全くその通りだったよ”と思う。2nd setが非常に楽しみ……。
2nd setは、ボクの記憶錯誤がなければ、「3;10 Blues」という曲から開始。グッとストレートアヘッドなジャズから入り、妙に安心というか嬉しくなる(この度はどちらかと云えば、こういったスタイルの演奏を期待していたので)。続いて渡辺貞夫氏曰く「尊敬していたチャーリー・マリアーノ氏と共演したという2曲」に入る。確か同氏、チャーリー・マリアーノと共作したアルバムが2作品あったと記憶しているが、うかつにもチェックしてなかった。ややメロディアスなラインが特徴的で、同氏の演奏特色や魅力が十分に感じられる曲だったと思う。それから順番は失念したけれど、1999年度のアルバム「Remembrance」に収録されていた「Going Back Home」が演奏された。軽快でラテン調のリズムをバックに快調に演奏。
そして、この日の2nd setでの演奏のハイライトは、ジャズスタンダード「My foolish Heart」でしっとりと聴かせて会場の聴衆を魅了し氏の音楽世界に引き込んだ後、Baden Powellとかつて共演したという「○○プレリュード」(ゴメンナサイ、タイトルを聞き逃してしまった)で、哀調を帯びた正しく“サウダージ”してしまいそうな曲への展開だった。思わず目頭が熱くなってしまった。完全にこの2曲の展開でボクはノックアウトされてしまって恍惚状態w。
その後は、1-2曲演奏があったと思うけれど、完全に失念。頭の中は十分すぎるほどの感動に打ちのめされてしまって、多分十分に働いていなかったのであろうと思うw。
無事に2nd setが大盛況のうちに終了したのだが、渡辺貞夫氏は息も上がらず意気軒昂そのもの。時刻はそろそろ午後10時近くなり、その御年を考えると躊躇したのであるが、「でもせっかくだから」という雰囲気が会場内には漂っていて、聴衆一同でアンコールを求める拍手。暫く待つと、再びステージに登壇し、アンコール曲を2曲ほど。渡辺貞夫氏やや茶目っ気な笑顔を浮かべて曲紹介「You’d better go,
nowを演奏します」とw。
しっとりとしたバラード曲で、それまでのボクを含めた聴衆の興奮を穏やかに沈めてくれるような名演だった。そして当夜最後の曲となったのであるが、どうも即興演奏のようで、リズムが提示されると、渡辺氏が(多分即興で)ジャズスタンダードの「Tenor Madness」のフレーズを吹き始めた。他のメンバーたちが虚を疲れたように驚いた笑顔を見せ、それについて演奏をしていくという展開、最後は演奏者・聴衆も満面の笑顔で終演となった。
再びイチロウと合流する。彼、先ほどよりも更に顔面を紅潮させ瞳を潤ませている。「いやあ、本当にNabesada 凄かったよな。不覚にも涙が出そうになった」という。「Nabesadaの音楽世界を見せて貰った感じだよ」と。
全くだ。演奏する時のあの引き締まった表情と時折見せる鋭い眼差し、そして共演者に演奏を渡した後にその演奏者を見つめるために横を向いた時の横顔に感じられる長い年月。当夜の演目では、長い音楽キャリアで培われた沢山の引き出しから、彼の幅広い音楽世界の一端を披露して貰ったような、それでも渡辺貞夫の音楽世界を網羅して貰ているような曲目構成で、名匠の技を十二分に堪能させて貰ったような、そんな気がして大満足であった。
演奏された曲は、どれもカッコ良く納得できるものだった。ストレートアヘッドなジャズもボサノバも、ジャズロック・ファンクもそしてアフロも、どの曲も説得力があったし、それらが全てNabesadaの音楽に昇華されていた。アップテンポな曲もバラードも、同氏の演奏する曲は、基本的に明るくて聴く者を魅了させてしまう。そして当夜の同氏の演奏は少しの衰えも感じさせないエネルギッシュに溢れた現役バリバリの演奏だった。孫の世代になる演奏者たちの様子には、その眼差しと時折示す笑顔から、同氏との共演を心から幸せに感じ同氏をリスペクトしている様が認められた。
いつものように、コンサートが終わり、会場からふらふらと歩いて近くの居酒屋に移動。そこでオフ会をイチロウと行う。ふたりとも「スゲースゲー」を繰り返すのみであまり言葉にならなかったのであるが、当夜の大感動は十分に共有していた。
「Nabesada、本当にカッコ良しw‼ あんな爺様になりてーw」「もう、俺たち断然Nabesada信奉者だよな、俺らNabesadistだよなw」等々。
この度、Nabesada祭りと称して、俄か勉強のために同氏のアルバムCDを10数枚ほど聴いてみたのだが、あまりの多作ぶりとその音楽性の幅の広さに当初は戸惑う事が多かった。
渡辺貞夫の音楽について、どのように捉えたら良いのかボクなりの答えが出せずにいたのだけれど、当夜のLiveを聴いて物凄く納得と大満足を得ることが出来た。
その個人的に納得した答えについては、また後日書こうと思う。というのも、ボク達は12月6日に西宮市で開催される「Naturally」フォローコンサートにも聴きに行くという予定があるので、同公演を聴いたうえで、ボクなりの答えをまとめるのが良いだろうと思われる。
暫くは、手持ちのアルバムを聴き返しながら、その夜のLiveの余韻を頭の中で反芻して楽しみたいと思っている。
~独りNabesada祭り1st set目の終わりw~
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