彼との雑談の際に、私が「あのね、blogのことなんだけどさ、“イチロウ公漫遊記”という企画でね、高校の同窓会が各地で行われる度に、そこにMR4を持ち込んで、その土地を走って、うまいものを喰って、それを文章にするってことしたいんだけど」と持ち掛けると、彼は「全然だめだね。走ることに徹すること。その土地の奴も同行して走るんじゃないとダメだ」とわざとハードルを上げるようなことを言った。私が調子に乗って「じゃあ、イチロウ公がその地元民に、俺に“島のグライペル”タカヒロに“かごしまのチッポリーニ”と命名したように、称号を授与して廻るっていう企画はどうだ?」と付け加えると、イチロウはゲラゲラと笑った。
その後、イチロウは、天気の良い日は片道20㎞を自転車通勤、雨天にでもなれば仕事の後にローラー台でペダルを廻し、トレーニングに余念が無い。「どうしたんだ?何かに憑りつかれたのかw?」と茶化すと、「あんたも見たでしょ。やまなみクライムライドで俺が棄権したの。あれ今から思うと、過体重だったんだよね。だから、もう3㎏絞り込まないといけないのよ」と言うのだった。
私の見立てでは、あのサイクリング大会での彼が棄権した要因は、明らかに前半のオーバーペースによるものと思われるのだが(最近気が付いたのだが、彼のスピードは素人では猛者レベルであることには間違いなさそうである)、彼の出した結論はそういう事なのだから、それが正しいのだとするしかない。
傍で、イチロウがそんな風にトレーニングに励んでいる姿を見せつけられると、益々彼我の差は広がっていくように思われ、私もそれなりにトレーニングを続けるつもりになり、先週の日曜日に早速愛車に跨って何時もの山坂道を走ることにした。
コースは、極楽寺山(国道433号)の激坂登坂とストレート下り坂~県道292号/ 曲がりくねった登り坂-湯来南・玖島のなだらかな登坂と下り坂~県道42号/ 友和~大竹市街地の最後の登り坂の後谷間に大竹市を臨みながらの下り坂。スポーツサイクルショップ・ウエキへの訪問後、宮島街道沿いの裏道を経由し西広島まで。恐らく走行距離にして、80㎞弱。
午前8時50分に自宅を出発した。
極楽寺山への登坂道は何時走ってもげき坂で、ここしばらくのあまい練習ばかりを重ねてきたせいか登坂に難渋したが、他にも対向車線で下ってくるヒト2名、私と同じく登坂しているヒトが1名の同好者の姿を認め、途中でへこたれている場合ではなかった。この極楽寺山登坂は、それを終えると充実感があり、辛い想いをする代わりに達成感の報酬は大きい。峠を過ぎて、緩やかな下り坂の爽快感は格別のものがあった。
国道433号が湯来・湯山街道と合流すると、そのまま湯来方面に左右に蛇行するなだらかな坂をしばらく上がると、県道292号との別れ三叉路にぶつかる。その三叉路にあるコンビニで水分補給を兼ねて小休止。我が愛車を眺めて写メをしていると、あるドライバーが声をかけてくれる。「にいさん、この自転車カッコイイね。何処まで行くの」と。愛車を褒められて悪い気はせず、笑顔でお礼を言い、大竹まで県道292号を通っていくのだと応じると、その男性「え、そんな遠くまで行くの。良い運動になるね。気を付けて」と言ってくれた。再度「ありがとう」と応じ、出発する。
県道292号沿いの湯来南~玖島、県道42号沿いの友和までは、なだらかな勾配の登り坂とその後下り基調の道が続く。左右は山間に田圃が広がり、自転車で走っていて誠に気持ちの良いところである。対向車線に大竹市側から上ってきたと思わるサイクリスト3人程度見かけ、すれ違う度に軽く会釈する。左右の田圃には、首を垂れた稲穂の緑が広がり収穫を待っている。空気はひんやりとし、借り入れた稲を田圃の隅で燃やす煙の臭いが辺りに立ち込めていて、里山に秋の訪れたことを五感で感じることが出来た。
友和を離れ、暫く行くと、ため池沿いの山道となり、閑散とした道は下り基調。左右は木立で左右にカーブしているため、前方からやってくる車に気を付けながら、ペダルを快調に回す。ため池沿いの道から左折すると、このコース最後の200m-300m程度の登り坂。疲れた脚にずっしりとした負荷を感じるが、これを越えると素晴らしい下り坂が待っているので、精神的な負荷はそれほどでもない。
そして、谷間の下り坂を気持ちよく下降、次第に視界が開けて大竹市市街地とその向こうに瀬戸内海が見える。このコースの一番のハイライト。道は広く路面もスムースであるため、ブレーキをかけずに一気に下って行った。
国道2号線に出ると、しばらく岩国市方面へポタリングし、スポーツサイクルショップ・ウエキに立ち寄る。同店は、旧道沿いにあり、ちょうど町内会の祭りがあり、子どもたちが神輿を押して旧道を練り歩いていた。
ウエキに立ち寄った理由、それは私の愛車にカーボンホールを装着する相談をすることだった。
応対する若い店長さんは、店内の壁に飾ってあったカンパニョーロのbora oneを勧めてくれたのであったが、私が「予算的に厳しいよ」と伝えると、それではと、「低価格帯として、アメリカのtrek製のモノは如何か?」と提案。続けて言うには、マサキのバイクであればカンパのものを付けた方が、自転車の完成度が高いよ、価格帯の差はつまるところ車輪の回転のスムースさに現れるよ。それから、カーボンホイールにはリムハイト50㎜と35㎜のものがあるが、35㎜は軽くてヒルクライムに向いているよ。リムハイト50㎜のものは平坦な道を高速で巡航するのに向いているよ。このリムハイト50㎜のモノをつけると走り始めはちょっと重たい感じがするけれど、スピードが乗るとそのスピードを維持してくれて走りは誠に気持ちの良いものだよ、等と涼しい眼差しで語ってくれたのだった。
私は、恐らく涎をたらさんばかりにその説明を聞いていたことだろうw。店に飾られたカンパのホイールを眺めながら、脳裏には私の愛車にそのホイールが綺麗に嵌って、先ほど里山の道を走っている光景が浮かんだのであった。
「うーん」と唸り、笑顔を浮かべて「ちょっと考えますわ」と若い店長さんに告げ、すごすごとその店を退散したのであった。
帰りは、2号線沿いの裏道を東に向かって帰ったのであるが、頭の中は銀の車輪で頭がいっぱいになっていたのであった。
さて、どう予算編成をするべきかw? ああ、カーボンホイールが夢枕に出てきそうであるw。
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