ある初秋の昼下がり
イチロウ「近頃のマサキの走りぶり、誠にあっぱれである。おぬしと早駆けをしていると、これまでなら後ろから来るお前を気にしていたがのう。もうそれも気にせずとも安心して走れるわ」「褒めて遣わす」
マサキ「はは、殿よりお褒め頂き有難き幸せ。恐悦至極にございまする」
イチロウ「それでのう、マサキ、カーボンホイールの件はどうなった。」
マサキ“ギクッ”
イチロウ「おぬしのCinelli Superstarにカーボンホイールを換装した後、外したアルミホイールをお前のところに保管してあるExperienceにつけることになっておるだろうか。ウエキのおやっさんのところへ、今週末行ってくるのだぞ。必ずだぞ、な、マサキよ」
マサキ「は、はあ」(と、平伏する)
今年の5月中旬に、マサキは奮発して自転車のフレームをアルミからカーボン製に交換、他のパーツはそれまでのものを流用したのだが、手元にアルミフレームが残った。イチロウ殿は、マサキが持ち帰ったフレームを眺めて「よしこのフレームを使ってもう一台組もうぞ。良いなマサキ」との機嫌よく宣うた。マサキも快く「そうですね。次はホイールをカーボン製にしとうございまするから、その時には今のホイールを使うことが出来ますル」と応じたのであった。
その後月日が流れ、その間にマサキはカーボンホイールについて調べていくうちに、なかなかの値の張るものであることを知り、簡単に手に入れることが出来る代物ではないことを悟った。だが、昨今は低価格帯のカーボンホイールも各メーカーから出されていることも知り、一縷の望みを持ってスポーツサイクルショップ・ウエキに出向いたであったが、マサキは敢無く撃沈w。寧ろ、涼しい眼をした店長さんの勧めるカンパのホイールに目を奪われ、すっかりそのホイールが欲しくなってしまっていた。
週が明けて、マサキがイチロウ殿にウエキでの首尾について報告したところ、イチロウ殿は重々しく頷き「そういうことであったか。そちの想いも十二分に納得いくものである。それはそうであろう」と応じたのであった。
翌々日のことであった。イチロウ殿が昼休憩の間に、どこかにふらりと出かけたかと思うと、しばらくして上士詰所に入りマサキの傍まで寄ると「このホイールとタイヤ使って於け」という。
マサキ「殿、それは誠にかたじけのうござりますが、流石にそこまでは心苦しゅうございます」
イチロウ「何、マサキ勘違いをするな。マサキがカーボンホイールを手に入れるまで、貸与するだけのことじゃ。苦しゅうない、使って於け」
マサキ「殿……..」
実は、マサキのアルミフレームを使って一台を組むにあたり、イチロウ殿は様々なパーツをマサキに気前よく与えていたのであった。「これらはな、わしがこれまで愛用していたものだ、貴様の走りぶりに対する褒美じゃ、取って置け」と。
○イチロウ殿から下賜されたものを列記してみると
サドル、シートポスト、ハンドル、ステム、チェーン、
○無償貸与されたもの、アルミホイール、タイヤ。
○マサキが新たに購入したもの
因みにペダルは保管していたSPDペダルを使用予定。
マサキはイチロウ殿の思し召しを大変有難く思いつつも、イチロウ殿からのにじり寄らんばかりの圧力に後ずさるような想いも抱き始めていた。これは何とかして早くカーボンホイールを手に入れて、イチロウ殿にホイールを返却せねば…….。
10月のとある日、仕事が一段落がついた午後5時過ぎ、城内の上士詰所に上記した各パーツが揃ったのを見たイチロウ殿は満面の笑みを浮かべて「やったじゃないか、そろそろの組み始めることが出来るなW、何?ヘッドスペーサーがまだ届かないだと?仕方ない出来るところからゆるりの始めるかの…….」と独り言を言い工作を始めたのであった。「腕が鳴るのうw 実は、プラモデル作るより、自転車組み立てる方が簡単なんだよね~」とも言いながら。
マサキは、脳裏の中に三度銀色の車輪がぶら下がっているのを見たのであった。
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