「大きいクマさん、小さいクマさん」シリーズの第2弾、夏休みを利用した愚息との東京行きについて書き進めて行くつもりであったのだが、暫く現実生活が忙しくこのblogに立ち戻る心理的・物理的ゆとりがなく、そうこうしていると、いくら私的な日記とは云え、あまりにも個人的感傷を書いても仕方がないなという気持ちが強くなった。大変楽しい旅ではあったが、これは私の心の中にしまっておこうと思う。
その後、現実生活・仕事上の多忙もひと段落着いた。少しゆとりを取り戻したところで、イチロウとの間でどちらともなく“そろそろチャリで出かけるか。”ということになった。
イチロウには既に腹案があったらしく、旧山陽道を広島から山口県東部を行けるところまで走ってみようということになり、私も特に異論なく「では、そうしようか」ということになった。
10月11日連休の中日、私の前日からの仕事明けを待って、午前10時過ぎにJR五日市駅前に集合。この度は、行けるところまで自転車で走行し復路は輪行で帰ってくる計画であったので、持ちだしたbikeはGiantの24inchi車ということになった。午前10時25分頃にイチロウと落ち合い早速出発することになったのだが、イチロウ出発直前になり「今日は予定を少々変更し、岩国から海沿いを柳井市に向かい、出来たら徳山市まで行きたい」とさらりと言う。
“えー、徳山と云えば、オイラ新幹線か自動車でしか行ったことないもんね。またコヤツ、無茶な計画をこしらえてきよった”と絶句w。イチロウ、私の表情を察してか「たった140㎞程度だからなあ。まあ行けるところまででいいけどさ」と笑っている。
“こっちはね、睡眠不足と一昨日食べた肉が当たったらしく今一つお腹が本調子じゃあないのだよ。”と多少ぼやかしながらイチロウに予防線を張っておくw。但し仕事の都合で2日間飲酒していなかったから、コンディションとしてはこれまでに比べても悪い方ではなかったのだがw。
午前10時30分頃に出発し、JR五日市駅を出発し宮島街道(国道2号線)を西下する。その頃には空は青く晴れ気持ちの良い秋の午前中という按配になった。漕ぐ脚も軽くまずまずの滑り出しであった。
宮島口の手前で、西広島バイパスと宮島街道が合流する時点で何時ものごとく自転車の進め方に迷う~バイパスの合流部は自転車通行禁止となっているため、側道を進まないといけないのだが、その側道から宮島街道に再び戻るのには少々面倒くさいことになっている~。結局、側道から阿品台団地に上がる高架を、宮島街道を跨ぐ形で上ることにしたのであるが、そこから宮島街道沿いを数十メートル東に戻るのが面倒くさく、そのまま阿品台団地に入り、前回通った裏道を出来るところまで西に向かおうという事にした。上り坂道を標高100m程度登坂したのであったが、その時は脚も軽かったのと、“今日は行けるところまでだからね”というイチロウの言葉が脳裏にあり、全く苦にならなかった。この行程が後で私の大きな悔いになっていくのであるが、この時点ではこの後の展開を知る由もなく、能天気に左眼下に広がる宮島を眺めて“誠に気持ち良し”と悦に入ってたものだったw。
イチロウは途中で自転車を停めて、ローカルな和菓子屋さんに入りおはぎを2個所望し、店先でぱくついているのを暫し眺めて、再出発。その後、大野町の旧道をのんびりと西に走らせ、静かな旧街道沿いの佇まいを楽しむ。
大野浦の西はずれから再び国道2号線に戻り、大竹市をやり過ごし山口県岩国市に入る。時刻は12時15分頃だったか、先を走っていたイチロウが引き返してきて国道沿いのうどん屋を指さしながら「ここで、昼飯にするべ。うどんだったらお腹にも優しかろう」と声をかけてきた。“じゃあ”ということでうどん屋の駐車スペースに自転車を立てかけて、店に入る。イチロウ、“ぼっかけうどん”、私、“天麩羅うどん”を注文。思いの外旨いうどんであった。
12時45分頃に再出発。私は自転車でここから先は未だに行ったことなし。まだ、この先の待ち構える苦難を想像することなく、先を行くイチロウを追ってペダルを漕いだ。岩国市市街地が見えてくる高架を渡ると2号線を左に折れて、JR岩国駅前に向かう。
ここからは海沿いの道・国道188号線に沿って南に下る格好になるのであるが、岩国市街地を離れる頃から、向かい風を受けながら走ることになる。イチロウのケイデンスを見ながらそのリズムに合わせて漕いでるつもりが、瞬く間に引き離される。
“この夏、自転車にも全く乗らず、ジョキングもせず。こりゃあ、運動不足が祟ってるわあ。参ったなあ。体調の問題というよりも、運動不足による脚力低下だよなあ”
引き離されて独りで漕いでいると、大体がこんな感じで“泣きw”の思考が働き、“来るんじゃあなかった”と後悔の念が頭を過ぎる。“じゃあ、この重たいチャリを担いで帰るか?否、そんな面倒くさいこと嫌だね。じゃあこのまま走るしかないべ“と、そんな雑念が湧いてくる。
しばらくそんな詮もなき葛藤を覚えながらペダルを漕いでいると、何時しか海沿いに出て左側に島影が見え始めた。同じ瀬戸内ながら山口から見る広島湾はまた違った趣があって、目を楽しませてくれた。“これだから自転車は止められないw”と独り笑う。
JR通津駅前に差し掛かったところで、イチロウが駅前の広場で待っていた。更に近づくと、左側を差している。見ると駅舎を指さしながら「どうした。もう無理なら帰っても良いんだぞw」という。このオトコ、ある状況下ではてきめん厳しくなるw。「いやいや、なんの」と言いまた走り出したのだが、直ぐにイチロウに引き離されてトボトボと向かい風を受けながら走る。JR由宇駅前で再びイチロウが待っていて再び駅舎を差しながら「電車で引き返しても良いんだぞ!」とそんな事したらちっとも“良くないぞ!”という雰囲気を漂わせながら”言い放つw。
“このオトコ、完璧にオイラのヘタレ癖の操縦術を心得ておるの”。我ながらヘタレた声を出し、「ここまで来た以上、柳井までは行くからさ」と応じ、再出発となった。
由宇駅界隈を過ぎると、左前方には周防大島が見える美しい海岸道路となっているのであるが、この日は周防灘から吹いてくる向かい風が強く、己の脚にも厳しく精神的にもキツイ自転車行になっていた。すれ違う自転車野郎も何組も見えたが、追い風に乗って走行しておりどの顔も笑っている。“おのれ~”と声にならない怒声を口の中で発しつつ、ひたすらペダルを漕ぐ。
周防大島に掛かる強大な橋の橋脚を潜って暫く進むと大きな港町大畑港に到達する。イチロウ大畑駅前で泊まり笑っている。「なんだか旨そうな魚屋・料理屋があったなあ」だと。「時間があればちょっと寄りていところだけどな。」
“こちらそんなゆとりなしw。先急ぎたし。取りあえずは柳井市に行きたいし。そっから先イチロウが行きたければ、行ってくれても良いし。オイラ電車に乗って帰りたいしw。”
こちらの心情を察してかささずしてか、イチロウ、前方を差しながら「じゃあ元気出してあの坂上るか」と笑っている。
“ハイハイ、ここまで来たら、柳井までは坂があろうとも大風に吹かれようとも行かせていただきやすw。もう行くけんね”。
イチロウが指さした登り坂は、ちょっとした高架の坂であり、難なく乗り越えられたが、ここからの柳井までの海岸道路は筆舌に尽くし難しw。
ここから先、柳井市内までの道は海際を走り、天気が良ければ周防灘から豊後水道に向けての大海原が見渡せそうであり、波が打ち寄せる海岸も岩肌も荒々しく絶景ポイントが幾箇所かあり風光明媚と形容したいところであったのであるが、向かい風は一向に治まる気配がなく、全身に向かい風を受けペダルを漕ぐモチベーションを大いに削がれたのであったw。
“全く~、イチロウ~、どういうコース設計してくれてんねん。だから、海沿いじゃなくて山里コースが良いって言ったじゃんかようw。黄金色の稲穂と赤とんぼ見ながら山里走っていた方が平和的だったよなあw”ヘタレにヘタレた事を想いつつ、さりとて前進するしかなく、懸命にペダルを漕ぐマサキであった。
それでもペダルを漕げば自転車は前に進み、無事に柳井市街地に到達。国道188号線からひとつ市街地に入りコンビニで休憩を取ることにした。個人的には、今日のチャリ行はこの地で終了ということで身も心もリラックスしていた。レッドブル一缶、杏仁豆腐一個を摂取し、やや疲れが治まり元気を取り戻す。
イチロウ「さてここからどうする? 今、時間は午後3時ちょい過ぎ。柳井から電車に乗って帰るのであれば、徳山まで在来線で出てそこから新幹線で広島まで帰った方が早いだろうな。」
私「おおそうか、じゃあそうするか?」
イチロウ「ただなあ、まだ3時は勿体なくねえか?もうちょっと先まで行って、そこからJRに乗って徳山まで出ても良くないか?」
私「どこまで?」
イチロウ「光市まで後20㎞くらいかな。風も止んできたことだし1時間くらいでいけるのじゃないかな?」
私“?”「じゃあ、まあ移動ということで行ってみるか?」
イチロウ「ここからJR沿いを走ると山道になって面白くないから、188号の海岸沿いを行こうや?」
私(何も考えず)「じゃあ、そうするか……..。」
今から思うに、この時私は既に疲労の極致で思考力失っていたのだろうなw。光市に向かう海岸沿いは再び周防灘から吹き寄せる向かい風に弄ばれるわ、波打ち際から上がってくる潮水を浴びせられわで、それまで以上の難行であり、当初考えていた“移動”ではなかった。
それでも自転車はペダルを漕げば前に進むもので、諦めなかったら目的地には到達するもの。イチロウには大幅に遅れたものの、午後4時50分頃に無事JR光駅に着いたのであった。
駅舎の軒先で、二人の自転車を並べて記念写真一枚。イチロウ笑っている。
さてという事で、自転車を畳輪行の用意が整ったのであるが、イチロウ曰く「今の時間帯であれば、在来線で岩国にまで出てそこから乗り換えてJR五日市駅まで帰った方が早いね。」
“えっ? 徳山じゃなくて、このまま戻るのか?”“えー、何のための移動だったの……..w”
ただ、先頭車両に乗り込み、来た道を眺めながら電車で帰るのは気持ち良かった。ちょうど乗り合わせた他の乗客の様子を観つつ窓外の景色を眺めて、ローカルな気分を味わいながら今日走った道程を同行者とレビューしていると自転車走行だけの旅よりも旅情を2倍楽しめて、一日の疲労を感じつつも内なる満足が心の中で広がっていくのを覚えたw。
Tour de DOKKA/ IKERUTOKOMADEは、“走りはじめて後悔を覚え、走り終えて満足と心地良い疲労を覚える楽しき旅”ではありましたとさw。
(終わり)
備忘録;走行距離 約100km, 所要時間(途中休憩を含めて):約6時間30分だった。
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