1.2024年最後の留守番独り晩飯
12月27日に、2024年最後の一人晩飯を作った。年の瀬ということもあり、私好みの蕎麦を作って年越し蕎麦とした。若い頃に母親が大晦日の晩に忙しい正月準備の合間を縫って作ってくれたかけ蕎麦が近年大変懐かしくなり、師走の一人晩飯の際には必ず作るようになっている。
写真のように、豚肉を使った肉蕎麦で、竹輪とモヤシ、そして刻み葱がトッピングされている。かけ汁は和風だしにコンソメを追加し、全体的に南蛮風蕎麦仕立て。この度は、乾燥ポルチーニが大量に余っているので、その戻し汁も出汁に追加してみた。決して私の家族を含めて他の方に強くお勧めするような美味しい蕎麦とは言えない。しかし、私にとっては大変懐かしい味であり、これを食べずに年を越すのはどこか物足りなく感じる。齢を取ると共に私の味覚が退化しているのは重々承知しているが、味覚の退化と共に子供返りしているのではないかと感じてしまうのが、我ながら可笑しい。あ、言い忘れたが、この蕎麦、とても美味しかったですぞ(笑)。
2.密命
12月29日より冬休みをもらい、家内の実家に帰省した。冬休み直前に、アニキからちょっとした密命を下された。彼曰く、岡山の銘菓のひとつに「調布」という和菓子があり、それはあの「大手饅頭」よりも歴史が古いのだとか。それまで岡山の銘菓といえば「大手饅頭」が歴史的に一番古いと勝手に思い込んでいた。あの内田百閒先生がその随筆に「岡山の知人が上京するという知らせを寄越せば、大手饅頭を所望する」と書かれているぐらいなのだから、てっきりそう思い込んでいた。岡山といえば、絶対に大手饅頭なのだとアニキに反論したものの、この「調布」は江戸末期からあったらしく、製造元の店の名は「翁軒」と言うらしい。岡山に帰省する前にネットで調べてみると、翁軒さんは既に閉店しており、今では廣榮堂さんが製造販売を続けているようだった。家内に言わせると「きび団子に薄いどら焼き生地が巻いてあるだけよ。」とのことで、地元民から見るとあまりお勧めではない様子。それでも私はこれまでその存在すら知らなかったので、話題提供のつもりでこれを機会に買い求めるのも良いかと思った。
同日、岡山の家内の実家に到着後、その日の晩飯の食材を買い求めるために、天満屋まで出かけた。嫁子がそれぞれの買い物に夢中になっている際に、天満屋の前の表町商店街を歩き、翁軒の店舗があった場所を求めてしばらく歩いてみた。確かに天満屋から表町商店街を南に数百メートル歩いたところにその店舗はあり、そして閉店していることを残念な気持ちを抱きつつ確認した。そして天満屋に戻り、地下で廣榮堂制作販売の「調布」をゲットしたのだった。その後妻の実家に戻り実食。確かにきび団子と同じ求肥に小麦粉で焼かれた薄いパンケーキ状の皮が巻かれてあった。求肥が餡替わりとなっているのをどう捉えたものか。ちょっと評価に悩むところ。この駄文を読まれ興味が湧かれた方は一度お試しあれ。
3.日生の牡蠣を喰らうのこと
12月29日の晩御飯の際に、私が酔い気分で「明日は日生の五味の市(地元漁協の海鮮市場)に殻付き牡蠣を買い出しに行こう」と提案したところ、意外にも長男が大いに乗り気となった。翌30日には、長男にしては珍しく午前8時には起床し身支度を始めたので、それならばということで、8時30分に私と長男そして義父と3人で実家を出発した。
日生は私にとっては思い出深いところで、学生の時分に地元の小魚が食べたくなるとアニキ(私の友人)と日生までドライブし港近くの炉端焼き店で(アルコール抜きで)シャコ、渡り蟹、小エビ、イイダコ、ベイカなどを注文し鱈腹食べたものだった。あれは旨かったなあ。その数年後にその炉端焼き店は店じまいしてしまい、その後10年程度岡山で暮らしたが、気軽に地元の小魚を食べさせてくれる店に出会えなかった。前日の晩に日生まで牡蠣の買い出しを提案したのは、その裏であわよくば地元の小魚などが手に入らないかと期待してのことだった。
午前9時30分頃に、目的地である日生・五味の市に到着。開店は午前9時だったが、既に敷地内は大勢の来客で大賑わい。市の建物の道路を挟んだ向かい側にバーベキュー広場があり、そこには既に多くの人たちが海産物のバーベキュー・特に殻付き焼き牡蠣を楽しんでいた。朝早くから大勢のヒトが、焼き牡蠣を食べている様は圧巻だった。私たちの目的は殻付き牡蠣の購入であったため、それを横目で眺めながら、五味の市の建物に向かった。場内に入ると、既にそこも来客で大賑わいで、私も少しでも良いものを得たいと素早く移動しながら売られているものを物色していると、大ハマグリ、ナマコ、生きたハマチ、車エビなどが売られている。どれにしようかと考えながら場内を歩き回っていると、長男はいつの間にか長蛇の列の中にいる。二つのコーナーで殻付き牡蠣を販売していたのだが、そのコーナーには既に多くのヒトが並んでおり、長男が気を利かせてひとつの列の中に入ったらしい。殻付き牡蠣は大きな樽の中にあり、客の注文に応じてザルに移して量り売りしているらしかった。1㎏1000円の価格が付いていたが、私にはそれが高いか安いかはわからない。そしてその分量の中には殻の重さが含まれているのだから、どのくらい購入すると良いものなのか皆目見当が付かなかった。他の料理も食卓に並ぶのだろうから、せいぜい一人当たり2-3個食べれば十分だろうと思ったが、長男が俄然やる気を見せて「オレは10個食べるからな」と宣言していた。このオトコ、独り暮らしでひもじい生活をしているのか、相当飢えているらしい(笑)。「思うだけ買えば良い」と言い残し、私は私でその他の海産物を見て廻った。結局のところ、ハマグリは地元産ではないし、ハマチは既に購入済み、車エビとナマコを候補に家内にLINEでお伺いを立てたが、残念なことに車エビは却下され、結局ナマコ2個入り2000円だけを購入することになった。
振り返ると長男は未だに列の中におり、再び彼の元へ戻り共に順番を待った。私たちの前のおじ様が13㎏+3㎏を購入するのを見た時には、最後の樽の中に入った牡蠣の半分以上を持って行くことになり大いに焦った。ただ視線を移しよく見ると隣のコーナーでも、おばちゃんが牡蠣の販売準備を始めている。私たちの後ろに並んだ人たちは大いに安心したことだろう。それにしても、この市場にはこの後も続々と殻付き牡蠣が運び込まれることになるのだろう。年末の販売側の熱意と客側の購入意欲で場内は活気に満ち、ひと時ではあったが、年の瀬らしい気分を味わうことが出来たのは誠に良かった。結局私たちは3㎏分の牡蠣を購入し満足して引き上げたのだった。
私の勝手な印象なのだが、日生産の牡蠣は広島産のものに比べると内臓部分が少なく臭みが少ない。カキフライにするとこの臭みのなさが物足りなさを感じさせる気ががしなくも無いが、他の調理方法では、その身は肉厚で食べやすい印象を持っている。こちらの方が牡蠣を苦手とする人でも食べやすいのではないだろうか。特に、スーパーに出回っている今シーズンの広島産牡蠣は実成が悪く小粒なものが多く、これまで2-3回食卓に上がったが満足するものはまだ口にできていなかった。
それにしても、この市場では地元産の小魚は売られていなかった。季節が冬であったこともあろうし、観光客相手の市場なので瀬戸内の小魚を求める客もいないのかもしれない。そして我々日本人の食生活が変わり小魚の需要そのものが無くなりつつあるのかもしれない。
近年、瀬戸内海が綺麗になり、海水中の有機物が減ったことや開発の為に藻場が減り生息する魚種も魚量も減り、従って瀬戸内の漁獲高も減っているとの事。私が求めているような小魚や甲殻類もめっきりと獲れなくなっているかもしれないと思うと寂しい。
さて、その日の夕餉に、予定通り殻付き牡蠣が食卓に上がった。殻付きをそのままレンジでチンしてレモン汁をかけて食べるというシンプルな調理ではあったが、これが誠に美味であった。長男は宣言通り10個以上を平らげ、私は3個食べれば十分であった。片や食欲旺盛の男、片や年末になり早くも胃酸過多で食が進まなくなっている男。
うーむ、食欲イコール体力差をまざまざと見せつけられた年末であった。
おわり





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