2018年8月7日火曜日

2018年無知の旅

7月のある夕餉時に、向かい合って座っている愚息(19歳浪人生)が、唐突に「オヤジは現代音楽の中で誰が好きか?」と尋ねた。突然の質問だったので多少面喰いながらも「やっぱ武満徹が良いな」と応じると、「リゲティを知っているか?」と問う。

リゲティ?そんなヒト知らんなと言うと、愚息曰く「あのヒトの管弦5重奏良いよなあ」と。しばらく会話が別の方向に変わり、愚息と家内がやりとしている間に、テーブルの下でスマホを使ってリゲティを検索すると、スタンリー・キューブリック作品「2001年宇宙の旅」で彼の作品が挿入曲として使われていた事を知った。

“ああ、あれか!確かモノリスと人類が接触するシーンで不気味とも荘厳とも形容されそうなコーラスが挿入されていたな”

「リゲティって、2001年宇宙の旅の挿入曲に使われていたヒトか、わかった。」と愚息と家内の会話に無理矢理入っていくと、愚息「そう。じゃあアトモスフェールくらいは知ってたか?」などとやや上から目線で応えた。

愚息の上から目線っていうのが、少々悔しくて。とは言っても、この頃ではクラシック・現代音楽分野における知識量では、音楽オタク化した愚息には全くかなわなくなっているのでそんなに深刻な問題なのではないのだけれど、それでも映画/小説「2001年宇宙の旅」が好きであると思っている中年オヤジにとっては、迂闊にも挿入曲の作曲者を知らないでいたことに直面化させられ軽いショックと気恥ずかしさを感ぜざるを得なかった。

翌日、通販サイトでリゲティ作品を検索し彼の作品を俯瞰するべく何枚かの企画ものアルバムをポチって、そのCDが昨日手元に届いた。


それらのCDを仕事の終わりにi-tuneに取り込んでいると、横のイチロウが覗き込み「ああ、リゲティか、2001年宇宙の旅の」なぞとさりげなく言った。「あんたも知ってたのか?」と問うと、彼曰く「まあね、チェロ・コンチェルトとか聴いてたからね」と穏やかな声色で返した。



“なぬ~、みんな知ってたのか?知らなかったのはオイラだけか…….

この場合の“みんな”とは、私が普段の日常会話で音楽話が出来る、愚息とイチロウ、そしてコウイチという狭いサークルを指すのだけれど、コウイチは映画にも通じているからわざわざ確かめなくてもどうせ知っているに違いない。それにしても己の無知ぶりに軽いショックを受けた。

まったく……、これじゃあ“2018年無知の旅”じゃないのよ.....。という事で、奴らに追いつくべく、リゲティを昨晩から聴き始めたところである。





追記;所謂現代音楽あるいはそれに影響を受けた音楽というものは、実は50代のオトナにとっては、その子どもの頃60年代から70年代、例えそれを現代音楽だと知らなくても、その頃の映画やテレビドラマを通じてよく耳にしていたのではないかと思う。リゲティを聴き始めても、音の塊や不協和音、楽器の異色とも思える取り合わせを違和感を全く感じずにすーっとその世界に入っていくことが出来る。聴いていてとても楽しい。

つい愚息に、「こういう音楽って、オヤジの子どもの頃に何気に耳にしていたな。ほら音の塊がぐあーんと流れてくるやつとか」と言ったところ、奴は涼しい顔をして「ああ微分音のことね。微分音というのはね……」とスラスラと説明するではないか。

また、一本取られてしまったw。

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