2018年8月15日水曜日

夏の朝に自転車に乗る~その1~

811日から同月13日まで短い夏休みを取った。テレビなどの報道で帰省客や旅行客で日本各所が混雑しているなどのニュースが流れていたが、それを横目に私はどこにも行かず自宅でのんびりと過ごした。

ただ何もしないのは勿体なく、早朝からロードバイクに乗ろうと密かに目論んでいたのであったが、幸いにも天候に恵まれて目論見通り事は進んだ。

11日は、職場の留守番明け、雑務を朝済ませ、“暑さ慣らし”として、am11;50am 12:30まで職場付近の峠道を往復。恐らく気温は35℃まで達していたはずで、僅か40分の走行なれど暑さにやられてしまった。やはり、猛暑日の昼間に自転車で走るのは危険すぎることを実感。翌日からの自転車走行は、早朝から午前10時頃までが限界であることを悟った。

 8月12日、am 5:00に起床。窓外を見ると既に外界は明るくなっている。家族を起こさないようにそろりと起きて、スポーツドリンク200ml+アイスコーヒー200mlを流し込み体を覚醒させる。ゆっくりとジャージに着替えて、バイクのタイヤの空気圧を整えて、家を出たのは、am5;50頃か。



宮島街道沿いの裏道を使って西下し、廿日市の速谷神社付近のコンビニ辿り着いたのは、am6:20頃。そのコンビニで、ミネラル水+ビタミン炭酸水350ml+バナナ一本+ウィダインゼリー一本を購入。後者3つを補給し、水はボトルに入れて、am6:30頃に極楽寺山の峠を目指して登坂開始。



なるべくペースをキープすることを意識し、ギアを軽くすることをギリギリまで抑えてペダルを廻したが、意外にも好調で坂道を上がることが出来た。このコースはここ最近猛者どもの知るところとなり、毎回数人に遭遇するが、この度は早朝のためか、一人下ってくるヒトとすれ違っただけであまり見かけず、変なプレッシャーも感じずにマイペースで登坂を続けることが出来た。

それでも、センターラインが無くなり道幅が狭くなるころから勾配は恐らく123度となる箇所があり、その辺りから先ほどまでの好調感は失せて両脚、心肺への負荷が一気にきつくなった。どうもこの頃慢性副鼻腔炎にでもなっているのか、鼻腔内に鼻汁が溜って、それが呼吸を妨げることになってしまうのも厄介だった。

何とか200300m続く急勾配を上り終えると、木立に囲まれたつづら折りの坂道となり、ゆっくりと呼吸を整えながら登坂を続ける。毎回このつづら折りのカーブの数を数えるのだが途中で数え忘れてしまう。この度は数え忘れないようにと心がけるのだが、このつづら折りを上っていると、木立の湿気を含んだひんやりとした空気、静寂の中に聞こえてくるカッコウ、セキレイなどの鳥のさえずり、蝉の音などに意識が向いてしまいがちとなる。そのおかげでいつも雑念から解放されて、その時の己の状態に自然と向き合う事ができるのだが、この感覚が本当に気持ち良い。森と己が一体となっていくようで下界の雑念もどこかに消えさる。

つづら折りのカーブの数を数え忘れそうになったが、この度はしっかりと記憶を保ち、全部で7か所あったことを確認した。




坂道は、登ってきた国道433号と極楽寺山キャンプ場へ続く道の三叉路に差し掛かる。視界が左右の稜線がV字に切り開かれた先に宮島の弥山が遠望できる箇所に到着。ここから見る景色は何度見ても気持ちが良い。



廿日市市観光協会のホームページによると、極楽寺山は天平3年(731年)に行基が開山し聖武天皇が建立した真言宗の古刹寺があるのだそうな。下界からこの坂道を黙々と上がってくると精神が浄化されていく感覚があり、確かに古来人が霊験あらたかな山だと考えたのもよくわかるような気がする。

ただ現在の私は、弥山を遠望しながらも、早くも疲労困憊しへこたれている己と向き合っていた。このまま引返して下って行くか、当初予定していた極楽寺周回コースを進んで帰還するか。

ひさしぶりに極楽寺山に上って来て、随分疲れていた。国道を離れて極楽寺山キャンプ場へ続く山道を通って山の反対側に下って、再び国道433号に合流し、そこから再び国道433号線を廿日市方面への登坂道を上がり、今休息している三叉路まで戻って、そのまま廿日市市街まで下るコースをたどる自信が持てないでいた。

“どーしようか?”しばらく弥山を眺めながら思案していたのだったが、時間を確認するとまだam7:00を廻ったところ、何も急ぐことはないではないの、山を楽しめば良いのだし、途中でへこたれたら、休んで山の景色、葛原地区の山里風景を楽しめば良いではないか、そんな声が脳裏に浮かんできたのだった。


“行基様、そうさせていただきまする。ゆっくりと参りまする。”


心を整えると、あらたなモチベーションが湧いて来て、極楽寺山キャンプ場に向かう峠まで一漕ぎ、それからは山間の集落を縫う径を下って行った。集落を抜けると小川が流れる木立を抜ける。木立にはまだあまり日が届かず冷たい空気が全身を冷却してくれて誠に気持ち良かった。

その木立に囲まれた小路が終わると先ほど別れた国道433号に再び合流。そこを左折し、国道を登坂開始。道路標識によると平均勾配8度の緩やかなカーブの後に直線が続く坂道をただひたすらにペダルを廻す。そろそろ両大腿の筋肉に軽い痛みを覚える頃に、道幅が狭くなって左右の斜面に水田が広がる葛原地区に入る。水田には稲が朝日を浴びて青々と茂り目に優しい。集落を走っていると、地元のヒトが畦道の雑草を刈る準備をされており、挨拶をするとごく自然に「おはようございます」と返事をしてくれた。良いですね、夏の山里の佇まい。


しばらく集落を走るとふたたび針葉樹の木立に差し掛かり勾配がきつくなったのであるが、ここまでくればゴールに設定した国道433号の峠まで残りわずか。最後まで気を抜かずにペダルを廻し、am7:44にゴールに到着。一息入れる。

その峠からも眼下に廿日市市街地、その先に宮島弥山が遠望出来た。毎回このコースを走っていると、山の自然との一体感を得ながら己の雑念からの解放を得ているような、そんな気分を楽しめるのだ。この日も無事に“朝のお勤め”を終えたような充足感を得ることが出来た。

後は、国道433号の廿日市市街に向かって下って行くのみ。ペダルを廻さず、適宜ブレーキを入れて重力に任せて下って行くのみ。空気を切り裂いて下って行くのは、自転車に乗る最大のご褒美か。上がってきたつづら折りカーブを対向するクルマに気を付けながら下りていくと、猛者どもが其々に上がってきた。単独の者、ペアで上がってくるもの、皆何かを求めて入山しておるの、お疲れさまでござる。軽く会釈してすれ違うのだが、私はなんだか先達者としてどや顔になっていたかも知れぬw。




やがて道幅は広くなり、山すそまで降りていくと、陽射しがきつくなり蒸し暑い空気と街の雑音が私の全身を包んだ。人間界への帰還、そして私の日常に戻って行ったのであった。

(つづく)

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