2016年11月28日月曜日

2016.11.09. テンシンにて

2016.11.09 p.m. 9:45頃、イチロウと私は広島市内の中華料理屋「天津」にたどり着いた。細長い店舗の入り口から手前のカウンターに席を取り、生ビールとお気に入りの料理を23注文。しばらくすると、ビールが運ばれて乾杯し、一息ついた。



イチロウ;「やあ、やっぱりナベサダのライブは良かったねえ。仕事が終わって一度家に着いたら妙に落ち着いちゃって、また出てくるのが億劫だったけど、出て来た甲斐があった。」「ナベサダ氏、現役バリバリだよね。ほらよくあるだろう。ベテランの顔見せ興行的なコンサート。ナベサダ氏の場合は、そんなくたびれた感じが全くないものね。来年春にもまた新譜を出すって言ってたね。いやあ御年を考えると本当に凄いよ。」「2部でさ、My Funny Valentineを演奏したでしょ。あれから一年経ったんだなと思うと、感無量だよね。なんだか妙に感動してしまったなあ」

マサキ:「ホント、全くだ。何だか去年よりもお元気そうだったねえ。どのナンバーも良い演奏だった。ボクは、タイトル忘れたけど、セネガルの民族音楽からファンク・ジャズテイストに展開するナンバーが良かったな。」「去年もこの時期にライブに来たから、来年も同じくらいの時期に来てくれるかねえ?しばらくボクらの年末の楽しいイベントになりそうじゃない?」



昨秋に引き続いて、イチロウと私は渡辺貞夫氏のライブツアー広島公演を観に行き、2130分にライブが終わると、「同氏が行きつけ」と御自らステージで披露された中華料理屋「天津」に移動したのだった。当夜のナベサダ氏は、19:30ライブ開始の予定時刻よりも15分早くステージに現れて「そろそろ皆様が御揃いのようなので始めさせていただきます」と演奏を開始し、途中休憩を挟んだ2部構成のエネルギッシュで“細部にまで神経が行き渡った”演奏を披露された。その演奏には聴く側からすると年齢的衰えを全く感じさせないものがあり、今年も感動してしまった。ドラマーとベイシストは比較的若手のプレイヤーの方のようで、同氏は演奏を楽しみながらも、夫々のソロが始まるとその演奏者の真ん前からソロを見入り、時々小声で何事か囁いておられて、若手への助言をされているようだった。その姿に自分の経験を伝授するお師匠さん的風情もあり、その様子を観ることが出来たのもなんだか感動させられてしまった。

そんな事をイチロウと駄弁っていると、22時過ぎになんと!ナベサダ氏ご自身がバンドのメンバーを引き連れて「天津」に来店。イチロウも私もご本人が現れるとは期待していなかったので、これには大変驚き、思わず静かなる拍手をして口々に「ありがとうございました。お疲れ様でした」と声をかけさせていただいた。同氏とその一行はニコニコされながら、私たちの後ろを横切って店舗奥のテーブル席に入られた。

その後も小声でイチロウとナベサダ氏のことについてあれこれと雑談をさせてもらっていたのだけれど、「本当に同氏が80数歳だなんて信じられないよね」という話題から、前日深夜にBS1で放送されていた秋吉敏子氏に話題が及んだ。

秋吉敏子氏は米国在住の有名なジャズピアニスト・作曲家で現在86歳。前夜の番組は「デビュー70周年(!)ニューヨーク・コンサート」の模様を本人のインタヴューを織り込みながら構成されていた。この方も、多少歩く様子に年齢を感じさせるが、演奏そのものは年齢的衰えを感じさせず本当に素晴らしかった。番組終わりの頃に本人のコメントとして「常に前進をすることを心がけている」等と述べていらしゃった。



ナベサダ氏にしても秋吉敏子氏にしても、80歳を優に超えて尚も衰え知らずのエネルギーを持ち続けていらっしゃる。その音楽的情熱もそうだけれど「生」そのものに対するエネルギーも有していらっしゃるようにお見受けした。こっちは、まだまだ50歳をちょっと超えただけなのに「齢だ、歳だ」と弱音を吐くことが増えた。妙に丸くなったように見せかけて「足るを知るだよな」なぞと言って悟ったようなことを言ってみたりする。お二人のことを想うと、我ながら“そんなに老けたポーズを取ってどうするの?”と全く持って反省してしまう。

“来年も、絶対にナベサダ氏のライブを聴きに行こうぜ”とイチロウと私の間での雑談にオチが付いたところで、引き上げる時間となった。

イチロウ、おもむろに立ち上がり、「ちょっと挨拶してくるぞ、行くぞ」という。私、「えっ?マジでか?」と言いつつもつられて後に続く。店舗奥のテーブル席に座って談笑されているナベサダ氏のところに向かい、イチロウと私がそれぞれに同氏に当夜のライブのお礼を述べて握手をしてもらった。同氏は一瞬「うん?」という怪訝そうな表情を浮かべられたがすぐにあの優しい笑顔を浮かべて下さって、しっかりと握手してくださった。分厚くて柔らかな手でしっかりと握り返してくださったのが、大変嬉しかった。



これからもナベサダ氏を追いかけようと思う。



(おしまい)

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