2022年2月8日火曜日

芋づる式音楽探索~その3~ ハリーとの出会い

ボクの芋づる式音楽探索は、前回の最後に述べたように「Without Her」を作曲したHarry Nilssonにやはり向かった。予備学習にYou Tubeで彼の歌うWithout Herを見つけ試聴して、フムフムと了解し、ネット販売で「Harry Nilsson/ Original Album Collection」なるCD5枚ボックスセットをゲットした。

 


1)     Aerial Ballet (1968)

2)     Harry (1969)

3)     Nilsson Schmilsson (1971)

4)     Son of Schmilsson (1972)

5)     A Little Touch of Schmilsson In The Night (1973)

 

5つのalbumで彼のキャリアの中では前半期の作品が収められていた。急いで紙ジャケ裏面の曲目をチェックしてみると、肝心の「Without Her」はどのアルバムにも収録されておらず。Wikipediaで調べてみると、同曲は、別のアルバム「Pandemonium Shadow Show」(1967)に収録されているらしい。因みにこのアルバムが彼の実質的なデビューアルバムで、あのJohn Lennonがわざわざ本人に電話をかけて大絶賛したのだとか。へえ、そうですか、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったあのLennonも注目するくらいの出来栄えだったのか。ああ、ちゃんと事前勉強を入念にしておくべきだった。

 

ただし、You Tubeで視聴した彼の演奏から、彼の音楽性そのものにも興味が湧いてきたところだったから、ボクとしてはまず上記の5 アルバムを聴いてみるのも決して興を削がれるはずもなかった。

 

1968年から1973年の彼の作品を聴いてみると、ソングライティングとしてはその曲想はロックンロール、ヨーロッパ的ポップス、カントリーミュージック、リズム&ブルース、フォーク、そして(多分)ブギウギ、ラグタイム、ボードヴィルなどオールドアメリカポピュラーソングや同年代のポップスなどから幅広くアイデアを得ているようで、佳曲が多い。特に個人的に印象が強かったのは、オールドソングへの憧憬が見て取れるところだった。恐らく幼いころから色々な音楽に触れて成長したのだろうし、知り得た断片的な情報によると、子ども時代に大変苦労して過ごしていた様子で、これらの曲想の中にそれらの体験が強く影響を及ぼしていそうな気がして彼自身の個人史に大変興味が湧いた。もし彼の評伝が出版されていたならば、是非一度読んでみたいと思うのだけれど、それは今後の宿題とする。

 

本人自身が歌ったヒット曲としては、「everybody talkn’」「without you」などで意外ににも他の人が書いたカヴァー曲。聴いてみるといずれも何処かで聴いたことあるナンバーだった。

 

シンガーとしても力量は大したもので、ノリの良い曲では、ジョン・レノン張りにシャウトし、フォーク・カントリー調では明るく爽やかに、スタンダードナンバーでは、哀愁を湛えた甘くも優しい歌声を示し、その音色は変幻自在である。特にスタンダード曲を集めたアルバム「A Little Touch of Schmilsson In The Night (1973)では、彼のシンガーとしての力量を余すところなく表現されていて、ボクとしては完全に魅了されてしまった。恐らくこのアルバムはボクにとって愛聴盤の1枚となり、今後も繰り返し聴いて行くことになるだろうと思われた。

 

このヒトは、同年代の有名なアーティストほどビッグネームにはなり得なかったのかもしれないが、同年代の他のアーティストとは一線を画すほどの音楽的世界を作ったヒトであることには間違いない。60年代後半から70年代と云えば、ロックの全盛と商業的肥大化、諸々の社会運動など、音楽的にも世相的にも何かと賑やかな時代だった筈で、その中にあって彼の作品が世間の喧騒とは別世界で成り立っているように思える。ボクなぞは、そこにある不思議さを感じるのだが、50年後に彼の作品に初めて触れた者からみると、彼の作品には何か普遍性を帯びた上質のポップスとしての価値を保ち続けているような気がしてならなかった。

 

Without Her」の原曲を求めて探索をしていたら、もの凄いアーティストを発掘してしまったようだった。「Pandemonium Shadow Show」(1967)をネット販売でその中古CDを発見し注文して手元に届くまでの数日の間、これらの5枚を繰り返して聴いているうちに、すっかり彼の音楽そのものに嵌ってしまっていた。

 


そして本日件のCDが手元に届いた。John Lennonが大絶賛したというアルバム「Pandemonium Shadow Show」(1967)。Beatlesの影響を受けたと思わるものや60年代ポップス調のナンバーが強く印象に残る。実際にBeatlesのカヴァーを2曲ほど、多重録音でリードヴォーカルに本人がコーラスパートも入れて、アレンジもビートルズ風に施されていて、これはこれで聴いていて楽しい。その他のナンバーもポップスとして佳曲が数多く収録されていて、デビューアルバムにしては既に完成度が高い。

 

そして遂に「Without Her! 本人のナイーブで抑制的なヴォーカルに、チェロに続いてフルートの伴奏が被さり、バロック調のアレンジで繊細かつエレガント(このあたりもBeatlesElena Regbyを彷彿とさせるけれども)であり、良い出来です。うーむ素晴らしい。

 

と、いう事でボクの芋づる式音楽探索は、大満足のうちに終わりに近づいて来つつあるのだけれど、You Tubeからボクの大好きなAstrud Gilbertoの演奏から始まって、Al Kooper/ Blood, SweatTears、そして最後に作曲者ご本人の演奏を以下に転載させて貰っておくので、ご興味のある方はどうぞ参照していただいて、楽しんでみてください。

 






どの演奏もそれぞれのアレンジに味わいがあって良いでしょう。名曲は、どんなアレンジが施されても甲乙つけがたい例のひとつと思われる。/そもそも良い曲だからこそ、色々なアーティストが取り上げて工夫を凝らして演奏するのだろうけれど.....。

さてこの次は、どんな音楽探索が出来るか?まだとっかかりは思いつかないのだけれど、また新しい発見と喜びがある筈で、そのことを想像するだけで大変愉快である。

(完)

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