購入に意外に苦戦することになったのは、ヘッドパーツ・スペーサーで、この樹脂製の輪っかが手元に届くのに2週間の日数がかかってしまった。このスペーサーがないと、ステムの位置が決められないどころか、ホークを通してタイヤを嵌めて、ハンドルに取り付けたデュアル・レバーからの各ワイヤーも取り付けられないわけで、こんな輪っかのために何も作業が始められないのだった。
イチロウ、連日のように「マサキ、スペーサーはまだ届かんのか‼?」とご下問されども、来ないものは来ないのであって、普段なら通販サイト「密林」から適宜発送したよとか明日届くよと事前の知らせがメールである筈なのに、この度はその素振りさえ示されなかったのであった。このスペーサー、販売元から直接送られてくるはずになっているので「密林」も直接には輸送過程を把握していないのかもしれなかった。
イチロウ「まだ、スペーサーは来ぬか?」マサキ「はい、未だ音沙汰ござらぬ」のやりとりを数回繰り返した数日後の10月10日の夕方、お待ちかねのブツは航空郵便にて中国からふらりと届いた。
“樹脂製の輪っかは今や中国製なのか、へーっ”とある種の感慨を覚えた。こんな単純な代物なのにこれがないと自転車は組み立てられず。“自転車一台の成り立ちひとつをとっても国際化してんだなあ”とどうでも良いことに感動しつつも、少しでも早くイチロウ殿に知らせなければ。
「殿、ご注進!」とばかりに、仕事を終えて寛いでいるイチロウにブツが届いたことを報告すれば、「ウム、でかした」とイチロウ。
「早速見せてみろ」とのことだったので、封筒から輪っかを取り出すと、イチロウ「ふむふむ」サイズのあった輪っかを取り出して、フレームのヘッドチューブにホークをはめ込み、事前に寸法を計算し組み合わせを決めていた輪っかをヘッドチューブから出たホークに嵌め、その上にステムを取り付けてしまった。
それからイチロウは、連日昼休み、アフター5に取り揃えていたパーツをフレームに取り付け、後輪用のホイールにはスプロケットを、ダウンチューブにはチェーンリング並びにクランク、そしてフロント・ディレーラー、チェーンステイにはリア・ディレーラーを、それらを順次取り付るとあっという間にチェーンを取り付けてしまった。
「うん?」「あのー、良いのかな?オイラの出る幕なしか?なんだか悪いような……」というマサキを尻目に、イチロウは今度はハンドルに取り付けたデュアル・レバーにブレーキ、ギアのワイヤーを取り付け始めている。
イチロウ「ああ、このワイヤーのはめ込むところがちょっと見えねえな」と、ワイヤーの突端部分のはめ込みにやや苦労しており、ペンライトでレバーの奥を照らしアシストをしたのが、マサキの行った作業全行程で後は、すべてイチロウが組み立ててしまい10月12日までには、自転車がほぼ仕上がってしまった。
「ギアの調整が難しいんだよ」とその作業を一晩寝かせたものの、10月13日には、ギアの調整も終わり、最後にギア・ワイヤーを切断して全作業を終了。イチロウ殿が「パーツさえ揃えば、組み立てはプラモデルより簡単!」と豪語していたままに、あまりにも容易く自転車の組み立てを終えてしまったのには、驚いた!
余談になるけれども、このイチロウ、マウンテンバイクの油圧サスペンションの調整も自分でそれ用のオイルを買ってきて調整出来てしまう、それもスポーツバイクショップで何気なく話をしたら、プロにも驚かれてしまったという逸話を持つオトコであった。
この男、本当にスポーツバイクを組み立てさせたら、ものの2‐3日で仕上げてしまう野郎なのだ。
最後に、マサキが完成の記しとして、ハンドルにお好みのバーテープを巻き(イチロウの監督のもとに2度のやり直しを命ぜられることになったがw)完成。
10月14日(土)の昼休みに、職場の前の道を交互に試走して、目出度く“納車”と相成った訳である。実際に乗ってみると、カーボン・フレームに馴れた者にとっては少々起動が重たく感じられたが、乗り味はかっちりとしており大変満足。言いだしっぺのイチロウが予言していたように、普段の練習用には充分であった。
私が満面の笑みを浮かべて「イチロウ、素晴らしい乗り味だよ。良いよ、良く出来ている」と言えば、イチロウも満足そうに眼を細めて深く頷くのであった。
こうして私のCinelli Experienceは、イチロウの手によってものの見事に復活しめでたしめでたしなのであったが、実はもう一つの問題が生じてきていた。
それは、秋も深まり日照時間が短くなって、夏の間に半ば習慣になっていた夕方トレーニングが出来なくなったことであったw。さてどうするべw?
(別のタイトルにてつづく)