「CP⑤道の駅 掛け合いの里」から「CP⑥道の駅 とんばら」129㎞地点
この後も私が先行しイチロウが後方に続いた。なるべく同じケイデンスを維持し一定のスピードで走行するように心がけたが、ここから道路は長い登坂側が二車線となり勾配もきつくなり始めた(三瓶山付近の登坂道よりもなだらかだが)。必死で失速しないようにペダルを廻していたが、次第にイチロウが遅れ始めていた。“あれ、イチロウの膝の故障は深刻なんだな”と分かり、途中で待つかそのまま自分のペースで走行するか大いに悩んだが、進むにつれて自分のペースも明らかに遅くなってきたため、このまま走行していてもイチロウに追いつかれるだろうと判断し、そのまま走行する。時々後方を振り返りながら走っていると、次第に誰かに追いつかれる。イチロウか?と思うも別のサイクリストで、ウムムと悩む。2人ほどパスされてそのまま走っているもイチロウは追いついて来ない、アレレと想いながら目の前の登坂道と格闘しているとついに登坂車線が消えてピークに到達。暫くすると平坦になり、やがて長く暗いトンネルを抜けた後に下り坂となり、CP⑥道の駅 とんばらに到着した。疲労はピークであったが、ゴールまではあと10数キロとなっており気分的には安堵し始めていた。チェック受付を済ませて、その横で支給されていた地元のミニトマト、種のないブドウを数個ずつ貰った。どちらも氷水で冷やされていて、疲れた体には誠に旨し。トイレも済ませて、大量の汗を拭きながらイチロウを待つもまだ来ない。幾人かの参加者がCP⑤に到着し、あれはイチロウか?と確認するがいずれも違う。やや手持ち無沙汰になり、大会運営係のヒトに「このトマトとブドウは地元産ですか?」「ゴールまではまだ厳しい坂は残っていますかね?」などとどうでも良いことを聴いたりして過ごしていた。ここで多少混乱したのは、渡されたマップで計算すると残り11㎞の筈なんだけど、誰かの会話では残り15㎞ということを小耳に挟んでしまって正確な距離が分からなくなったこと。11㎞でも15㎞でも大差ないので気にしないのだけど。それにしてもイチロウが遅い。「こりゃマズいね、どこかで立ち往生しているのか?携帯で連絡を入れてみるか?」と迷っていた処、やっとイチロウが登場。「待たせて悪かった。うむむ、膝の調子が悪い。ここでリタイヤするからさ」とのこと。「ああ、そうなのか。付き添わずに悪かった」と私が応じている間に、彼はテキパキと大会運営係の処で出向き「リタイヤします」と申し出て、係の人も「ああ、そうですか。では・・・」とイチロウを誘導しミニバンに彼と彼の愛車を入れて出発してしまった。“ありゃりゃ・・・・”イチロウがリタイヤするなんて全く想定していなかったのだけれど、物事はあっさりと進行し、イチロウのリタイヤ手続きは済んでしまった。やや呆気にとられる想いで眺めていたが、急に我に返り、「ここから先は独りでいくのか?そうかそうか。」と目の前の現実を取りあえず引き受けて自転車に跨いで出発した。
「CP⑥道の駅 とんばら」~「ゴール 道の駅 赤来高原」
この後のゴールまでは緩やかなアップダウンの連続であった。これまでの厳しい道のりを考えるとそれほどの難所はなくマイペースで走行、途中私に追いついた男性と交互に引っ張りながら走行した。午後3時45分頃ゴール。後半から先ほどの男性を引っ張る形で走行してきたからか、その男性が笑顔で「最後はひっぱってくれてありがとう」と声をかけて下さる。私も笑顔で「こちらこそありがとうございます。楽しかったですね」と応じた。大会運営係の処に出向き、最後のチェックを受け完走証を受け取る。チェックの几帳をちら見すると、大体半分くらいレベルでゴールしたみたいだった。
それからイチロウの姿を探したが、朝ブリーフィングが行われた場所付近で発見し再会。イチロウ「いやあ、済まなかったね。待たせて悪かった。もっと早くリタイヤして連絡入れれば良かったなあ」と。
こちらとしては、二人で走行する時には何時も私が彼を待たせていたので、それはお互い様だと思っていた。膝が故障した程度で深刻なアクシデントが生じた訳ではなかったので、不幸中の幸いだった。無事に家路につけるのだから、それで十分である。
私個人としては、「石見グランドフォンド」のリベンジを果たせた気がしたので十分に満足であったが、イチロウのリタイヤは多少なりともショックで、ほろ苦い後味がのこった。
また後日述べることになるかもしれないが、二人でサイクリング大会に出場するのは今回が最後になるかもしれないな.....。
最後にこの大会の運営に当たった方々に、多謝。素晴らしい景色に素晴らしいサポートに沢山お世話になりました。本当にありがとうございました。
おわり