何時ものごとく何気にTwitterを眺めていると、珍しくイチロウがツイートしコウスケと駄弁っている。2015年10月に渡辺貞夫氏の新譜:Naturallyがリリースされ、その共同プロデューサーとしてcello奏者のジャキス・モレレンバウムを迎え制作されたらしい。それを眺めながら、“へー”とは思ったものの私の興味はそれ以上湧かなかった。
然程時間をおかず、イチロウより「上記した旨であるから良いに違ないから、是非聴いてみようぜ」という提案があった。ブラジル音楽好きの端くれとして、ジャキスの演奏には興味が湧いたものの、実はこの私めこれまでに渡辺貞夫氏のLP・CD作品を聴いて来なかった。勿論同氏が数多くのボサノバ・ブラジル音楽を取り上げたアルバムを作成していることは知っていたのであるが、何故か聴いて来なかった。
尚も“うーん”と曖昧な反応を示していると、イチロウがややもどかしそうに「本当はね、マサキに是非聴いてもらいたいアルバムがあるんだよなあ……。」と宣う。それは、「Sadao meets Brazilian Friends」という1968年制作のアルバムで、なんでも同氏が単身ブラジルに乗り込んで地元ミュージシャンと共に録音したものだとか。
それを聴いても私は余り食指が動かなかった。取りあえず、Gilberto’sの一員として話題に乗り遅れまいと「Naturally」を通販サイトでポチり数日を経て手元に届き聴いてみた。同氏の奏でるアルトサックスの音色は美しいし、ジャキス・モレレンバウムのcelloにしてもアレンジも隙がなく美しい仕上がりになっている。文句なしなんだけれど……..。どうもしっくりとこない。それでもよく考えたら渡辺貞夫氏は1933年生まれということなの今年で御年82歳!
そのお年で新作を出すという衰えを知らない創作意欲、その確かな演奏を思うと本当に心から頭が下がる想いがした。イチロウと各々の感想を2-3交換した後、イチロウが再度Sadao Meets Brazilian Friendsを聴いてみろと強く勧めるので、“そこまで言うならば……”と通販サイトで中古盤を発見しポチり購入してみる。
思い返してみるに、渡辺貞夫氏については私が音楽的物心つき始めた頃(中学生)の頃には既に日本のポピュラー音楽シーン、否コマーシャル・メディアにおいても大変メジャーな方だった。テレビなどでは「カルフォルニア・シャワー」と共に、男性化粧品のコマーシャルやバイクのコマーシャルにも出ていらっしゃって、格好いい髭のオジサンって感じだった。大げさでもなんでもなく70年代から80年代にかけての時代表象のお一人だったように思う。余りにもメジャー過ぎてつい敬遠していたところがあり、そのまま今日まで同氏の音楽を聴かず仕舞いだったな。
数日して、「Sadao Meets………」が手元に届き、仕事が終わると早速i-tuneに取り込みながら、聴いてみる。#Bim Bon, #E Nada Mais……..と最初の2曲で完全にノックアウト状態。もうスゲー、スゲーw。同氏と地元ミュージシャンの出会いによって生じた化学反応というべきか……、演奏全体からエネルギーがほとばしっている! 同氏が地元に単身乗り込んで、地元のミュージシャンと真剣に渡り合ってセッションしている様子が伝わってくるようだ。地元の演奏者の演奏にもおざなりなものではなく良い緊張感・気合が十分に発揮されているようだ。そう思うと、地元の共演者をして真剣にセッションに向かわせた音楽的エネルギーがWatanabe Sadaoにはあったんだなあ。
※隣で、イチロウが“ボサノバ音楽史に残る作品としても良いくらいの出来だ”と宣っているw。
このアルバムを聴いて、完全に渡辺貞夫氏に嵌るw。序でに、i-tune storeでボクらの世代の者にはメジャー過ぎる、だけれど私は完全にパスして聴いて来なかったアルバム「カルフォルニア・シャワー」(1978)をポチって聴いてみる。
“ワ~、これも凄いw!”同アルバムタイトル曲「カルフォルニア・シャワー」を聴き始めて驚く。こんなにも緻密に楽曲づくりしていたのか……。道理で、このアルバムはジャズ・フュージョンにしては異例の大ヒット、100万枚以上の売り上げを記録したのも分かる。あの時代の音楽が凝縮されているようで、このアルバムを日本の音楽史に残る作品だったんだな、今聴いても恰好よし。37年前の音楽に今頃嵌っておりますルw。
てな事で、イチロウに火をつけられた格好となり、独りNABESADA祭りを始めている。ただ如何せん同氏は多作なお方なので、どのように食指を伸ばしていくべきか思案しているところである。
取りあえず、ボサノバ以前のものとして#(1961)Sadao Watanabe, #Sadao Watanabe Live
At The Junk(1969), フュージョン期のものとして#My Dear Life(1977), #Morning Island(1979)を購入して聴いてみることにした。
これらをポチり終わったところで、イチロウから耳寄りな情報があり、11月13日に私たちが住む街で同氏がカルテットを率いてライブを行うとのこと。二人で是非聴きに行ってみるかということになった。
翌日更に楽しい情報が、Gilberto’s関東支部の面々より届く。2015年12月に同氏が「Naturally」を録音したメンバー編成で東京公演をすることになったらしい。関東支部よりイチロウと私に「出て来ないか?」との打診あり。私の気持ちとしては、“是非とも!”と返事したいところであるのだが、何故かイチロウの反応が今一つ鈍い。折角、事前勉強をし、本番に望む、そしてGilberto'sの面々と楽しいオフ会という黄金コースを昨冬のMika Samba Jazz Trioライブの時に確立したのになあ、今回もその再現と思いきや……。
“あのさー、ここまで来て。オイラの火をつけておいてw。梯子外すかあ?”と突込みを入れるが、今のところまだイチロウより色よい反応が帰って来ずw。こうなったら、NABESADA祭りをこれでもかとデモンストレーション・示威行為を続けるしかないな……。
と、思い定めた矢先ことだった。
イチロウはmessengerでコウイチとポール・モーリア談義に花を咲かせていた。適当にその会話には乗らなかったのだが、アニキが宣うには「あのさ、最近思うところがあってなあ、俺たちの世代って結構隠れポール・モーリア・ファンっているんじゃないかな。ポール・モーリアで初めてブラジル音楽に触れたんだけれど、ポール・モーリアが取り上げたMPBの演奏ってリズムとベースがスゲー恰好良かったよなあ。マサキも子どもの頃聴いていたんじゃないか?どうだ?」だとプッシュしてきた。
「ポール・モーリア? いやいや、オイラは“水色の雨”しか知りませぬw」「確かに、隠れポール・モーリア・ファンが数多いるだろうことには全く持って同意するけれどさ。」
“おいおい、こっちは、まだまだNABESADA祭りの端緒についたところだぞー”“ポール・モーリアまでは手が回らんだろうが……w”
全く、どうも毎度のことながらイチロウにオモチャにされているような気がしないでもないw。
(おしまい)